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平成15年度農業農村整備事業費概算要求 田川水系農業利水協議会の「ふれあいまつり」 地球人会議シンポジウム 水の作文コンクール優秀賞作文「自然の恵み」 寄稿文「土地改良水利施設の維持管理」 |
図書案内 本誌へのご寄稿のお願い 平成14年9月主要行事報告 表紙写真説明 |
四つの資源を利活用した事業展開 平成15年度農業農村整備事業費概算要求 |
農林水産省は、8月末に平成15年度農林水産予算
の概算要求を財務省に提出した。概算要求額は、3兆
5983億円(前年度比12.8%増)として、内訳では、公共事業費が前年度比16.4%増の1兆8995億円を計上した。
農業農村整備事業費については、対前年比15.2%増の1兆642億円を要求。食料・農業・農村基本法や「食」と「農」の再生プランを踏まえ、農業・農村が有する従来の農地資源、水資源と、新たに有機性資源、環境資源を加えた四つの資源を利活用した施策を総合的に展開、『安全で安心な「食」と「農」の基盤づくり』、『人と自然が共生する美の国づくり』を目指す。魅力ある都市・個性と工夫に満ちた地域社会や循環社会の構築・地球環境問題への対応などを謳った「新重点分野」に7660億円を要求。また、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」への対応として、きれいな水の安定的供給、経営体の育成を目指した農地の整備、美しい自然と景観の維持・創造等、予算配分の重点化を図った。さらに、地域の主体性を重視した農村振興の新たな展開として、公共予算の135億円を非公共予算にシフトし、非公共事業を創設。15年度を初年度とする新たな土地改良長期計画の策定も特徴としてあげられる。
なお、概算要求の基本的な考え方等については、次のとおり。
農業農村整備事業
−平成15年度概算要求の考え方−
1.基本的な考え方
1.考え方
○ 「食料・農業・農村基本法(平成11年)」等を踏まえ、「『食』と『農』の再生プラン(平成14年)」及び「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(平成14年)」に即応し、
−安全で安心な「食」と「農」の基盤づくり
−人と自然が共生する美の国づくり
に向けた施策を展開
○ これらの展開方向を明確化するため、現行の土地改良長期計画を見直し、平成15年度を初年度とする新たな長期計画を策定
2.4つの資源の利活用
○ これまでは、生産性の向上などを図るため、農地と水を対象に農業生産基盤を整備
この結果、食料供給力を備えた一定の
「農地資源」と「水資源」のストックが形成
○ これからは、循環型社会の形成や自然と共生する田園環境の創造を図るため、
「有機性資源」と「環境資源」を新たに施策対象に位置づけ
○ このため、地域の多様な「人」の参画や他局庁、他府省の各種施策との密接な連携の下、
4つの資源が潜在的に有している機能や効果を最大限に発揮させるための施策を総合的に展開
3.取り組みの目標
「農地資源」
食料供給力を有する全国480万ha(水田262万ha、畑217万ha)の農地
○水田
・昭和30年代以降、区画整理の整備率向上を目標に整備を推進
・現下の営農体系への適合上、整備済み水田でも、排水等の要改良箇所が相当数存在
○畑地
・昭和40代以降、畑の用排水、農道と併せ区画整理等を目標に整備を推進
・現下の営農体系への適合上、既設農道の改良(拡幅、舗装等)や、畑地かんがい施設の要整備箇所が相当数存在
□ 既存ストックの有効活用を基本とした農地整備の展開
○ 地域農業の展開方向、担い手の意向や施設の状況等の観点から、農地資源が潜在的に有する機能の発揮度合いを総点検
○ 地域の実情に応じた多様でかつ機動的な農地整備を実施
「水資源」
農地に水を供給する農業水利施設と施設から供給され、地域を潤す水
・これまでに蓄積された全国4万kmの基幹的農業水路、21万カ所のため池、1,022カ所のダム、3,011カ所の頭首工等の農業水利施設ストックは22兆円に相当(平成7年度再建設費ベース)
・今後、耐用年数の経過により、更新時期を迎える施設が急増
□ ストックマネジメントの導入による農業水利施設の有効活用
○ これからは、予防保全対策による農業水利施設の長寿命化や、機動的な更新整備等による既存ストックの有効活用に軸足を転換
○ 畑地かんがいについては、必要となる水源開発に併せ農地への配水施設を計画的かつ効率的に整備
「有機性資源」
農村地域から発生する家畜排せつ物、食品廃棄物、集落排水汚泥等の有機性資源(バイオマス)
・有機性資源は十分にありながら、収集の困難性や効率の高い変換技術の開発が不十分なため、有効活用が低位
・近年の技術革新の進歩や地球温暖化防止対策、循環型社会の形成等への社会的要請の高まりから、たい肥やエネルギー等の利活用への取組の強化が必要
□ 都市と農村が共生・対流する循環型社会の構築
○ これからは、農村地域から発生する全ての有機性資源について、収集等のソフト面の充実と利活用を図り、環境に対する負荷を軽減する持続的な循環型農村地域社会を実現
「環境資源」
多種多様な生き物の生息空間の提供、美しい景観の形成などの多面的機能
・これまでは、主として農業生産性の向上のために、コンクリート等の人工物を材料に、効率性を追求した整備の実施により、生き物の生息空間の縮小や景観への影響を招来
□ 様々な人々がふれあう「美しい自然と景観」の維持・創造
○ 環境への影響の回避や最小化など「環境配慮の5原則」の考え方に基き、今後は、多様な「人」の参画を得て、農地や水路等において、生き物の生息空間、美しい農村景観など環境の創造を全国展開
II.「農村の振興」に向けた平成15年度概算要求
1.概算要求額
10,642億円(対前年度比115.2%)
うち「新重点4分野」7,660億円
2.重点的な取り組み
平成15年度概算要求においては、事業間に大幅なメリハリをつけ、以下について、重点的に取り組む
■4つの資源の利活用に向けた施策の展開
■「新重点4分野」への対応
【平成15年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について】平成14年8月7日閣議了
○魅力ある都市・個性と工夫に満ちた地域社会
(個性と工夫に満ちた地域社会)
・地域特性を活かし、多様な農産物の安定供給を担う豊かで個性あふれる産地づくり 等
○循環型社会の構築・地球環境問題への対応
・有機性廃棄物等のリサイクル、バイオマスエネルギー利用等を通じた資源循環型経済社会の構築 等
■「経済財政運営と構造改革に関する基本方針
2002(平成14年)」への対応
第2部 経済活性化戦略 2(4)産業発掘戦略
(食料産業の活性化)
○「ブランド・ニッポン」戦略に基づく農水産物の供給体制の確立
・きれいな水の安定的な供給
○「農業の構造改革の加速化」
・経営体の育成を目指した農地の整備
(ライフスタイルの変化が引き出す潜在需要の顕在化)
○「都市と農山漁村の共生・対流」
・美しい自然と景観の維持・創造等
3.重点分野への予算の集中
(1)既存ストックの有効活用を基本とした農地整備への 重点化
(1)経営体の育成、農地の高度利用など地域のニーズに柔軟に対応できる水田整備の展開
(1,603億円:対前年比110.4%)
○ 整備された水田を含む水田ストックに対し、これからは、地域の農業の展開方向や担い手の意向に一層柔軟に対応する農地整備を展開
○ そのため、ほ場整備事業と土地総事業を廃止し、地域の意欲ある担い手を支援し、担い手による営農に即応して、農地の高度利用や施設の補修などに柔軟に対応できる新たな事業の創設や整備手法を強化
・「経営体育成基盤整備事業」の創設
・「農地等高度利用促進事業」[非公]の創設
・「農家・地域住民等参加型直営施工推進調査」の創設
○ また、農地整備を契機として認定農業者等の経営体の育成や環境創造を併せて推進する仕組みを強化
・「経営体育成基盤整備事業」の創設
・「経営生産対策促進事業」[非公]の創設
(2)地域特性に応じた野菜生産のための産地強化に向けた畑地整備を積極的に推進
(834億円:対前年比116.2%)
○ 平成14年度からスタートした野菜生産特別対策を積極的に推進
○ 地域のニーズに応じた安全・安心な野菜・果樹産地の強化に向けて畑地の整備に重点化
○ 意欲ある経営体の支援、畑地かんがいの推進・高度化、樹園地の再編強化、堆肥利用の土づくり等の取り組みを強化
・「畑地帯産地形成支援事業」[非公]の創設
・畑総事業の担い手型(担い手育成型+担い手支援型)に重点配分
・野菜産地・樹園地緊急生産基盤整備推進調査の創設
(2)ストックマネジメントの導入による農業水利施設の有効活用への重点化
(3)健全な水循環に資する農業水利施設等の整備
(4,900億円:対前年比113.8%)
○ 安定的な水の供給や水質の保全などを図る農業水利施設や水質浄化施設を、流域全体を視野に入れ、計画的かつ着実に整備し、健全な水循環系の構築を促進
・農業農村整備推進環境保全技術調査の拡充
・水質保全対策事業(耕土流出防止型)の着実な実施
○ 整備の基本的視点を「施設の新設」から「農業水利ストックの有効活用」に転換し、農業水利施設の保全・更新施策を充実
うち 「ストックマネジメントの導入による農業水利施設の有効活用」
(2,759億円:対前年比126.0%)
○ 膨大な農業水利ストックの有効活用のため、新たな技術を活用した適切な予防保全対策により施設を長寿命化
・「国営造成水利施設保全対策指導事業」の創設
・「国営造成水利施設保全対策事業」の創設
○ 「施設の新設」から耐用年数を迎えた施設ごとの機動的かつ効率的な更新整備による「既存のストックの有効活用」に転換
・国営かんがい排水事業の拡充
(3)都市と農村が共生・対流する循環型社会の構築への重点化
(4)「人・もの・情報」の都市との循環が可能となる新たなむらづくりの推進
(1,483億円:対前年比123.9%)
○ 都市と農村が共生・対流する社会を実現するため、「きれいな空気」、「美しい自然」、「都市と変わらない生活」、「都市の持つ魅力へのアクセス」を備えた「むらづくり維新」を積極的に推進
・農村振興総合整備事業(むらづくり基盤型)の推進
・中山間地域総合整備事業(むらづくり基盤型)の推進
・田園整備事業の着実な実施
○ 「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、これまでの集落排水汚泥の農地還元を主とした取り組みから、これからは、バイオマス全体の着実な利活用が図られるよう、ソフト面での対策を含め、バイオマス利活用施設の整備等を総合的に支援
・「バイオマス利活用フロンティア整備事業」[非公共ハード]の創設
・農業集落排水資源循環統合補助事業(バイオマス型)の創設
・中山間地域総合整備事業(バイオマス型)の創設
・「バイオマス利活用フロンティア推進事業」
[非公共ソフト]の創設
・「農地還元利用推進モデル調査」の創設
○ 「e−むらづくり計画」に基づき、情報基盤整備とともに、地理情報システム等を活用し、農業農村の振興、施設の管理、防災情報等の提供を推進し、国民に開かれた多様な農村情報の受発信システムを整備
・「農村振興支援総合対策事業」の創設[非公共]
(5)「人ともの」の流通ネットワークの機能向上
(1,176億円:対前年比113.8%)
○ 農道を中心とした「人」と「もの」の流通ネットワーク機能の向上のために、今後は、既設の農道について、営農形態の変化に対応した拡幅や舗装等の「改良」を積極的に実施
・一般農道整備事業の推進
○ 産地化や共同集出荷など農業の持つ広域性を活かし、「合併協議会」を設立した市町村を受益とする農道整備の重点的実施により、市町村合併を側面から支援
(4)様々な人々がふれあう「美しい自然と景観」の維持・創造
○全事業において自然と共生する田園環境の創造を全国的に展開
○ 農村地域の多面的機能を発揮させるため、平成15年度中に事業実施中の全市町村(2696(予定))で「田園環境整備マスタープラン」を作成
○ このプランに基づき、全国的に環境創造型事業を展開
○ 地域住民、NPO等の多様な「人」の参画を促進し、農地、水路、ため池、里地・里山等の保全等を通じて、地域ぐるみで自然とふれあい共生する地域を実現
・「田園自然環境保全・再生支援事業」[非公共]の創設
・「基盤整備環境機能増進事業」[非公共]の創設
・「里地棚田保全整備事業」[非公共]の創設
・「水辺環境体験支援事業」[非公共]の創設
・「水と土と緑の再生モデル整備構想検討調査」の創設
4.施策の統合化による事業の展開
「ハード・ソフトの一体的実施」や「他局、他府省の施策との連携」による施策の統合化を行い、施策の目的や効果の効率的な実現を図る。
(1)既存ストックの有効活用を基本とした農地の整備の展開
・現下の営農体系に適合した農地の機能を持続的に維持増進するため、小規模で簡易な整備補修など
・基盤整備を契機とした担い手への農地利用集積、認定農業者の育成、麦・大豆等の生産振興に対する支援を総合的に実施
(2)「人・もの・情報」の都市との循環が可能となる新たなむらづくりの推進
○バイオマスの利活用の推進
・経済産業省、環境省等のリサイクル促進等に係る施策との連携により、集落排水汚泥、家畜排せつ物等のバイオマスの利活用を推進
○「e−むらづくり計画」の推進
・都市と遜色のない共通社会基盤の整備の一環として、高速インターネットによる農村地域のIT化を総務省との連携により推進
平成15年度 農業農村整備事業概算要求の概要(国費) (単位:百万円,%)( )は主要事項別構成比
事 項 H14年度
予算額
(1)H15年度概算要求額
(公共投資重点化措置要望)対前年
伸 率
(2)/(1)重点4分野 その他 合 計
(2)農業農村整備事業
(うち農村振興局)924,170
902,555
766,040
746,191
298,178
293,063
1,064,218
1,039,254
115.2
115.1
(農業生産基盤整備)
1.かんがい排水
うち国営かん排
2.経営体育成基盤
3.ほ場整備
うち担い手育成型
4.諸土地改良
うち諸土地改良
うち担い手育成型
うち水田農業振興緊急整備型
5.畑地帯総合農地整備
うち担い手育成型
6.国営農用地再編開発
7.公団事業
8.その他
(52)
480,353
222,189
173,906
0
84,816
79,059
26,700
25,754
12,960
640
60,593
26,472
22,877
32,587
30,591
(55.3)
423,294
238,837
204,229
107,513
0
0
177
177
0
177
55,922
32,938
7,835
13,010
0
(48.1)
143,443
37,557
17,517
8,894
0
0
6,855
5,881
0
1,177
18,861
2,332
11,684
24,493
35,098
(53.3)
566,737
276,394
221,746
116,407
0
0
7,032
6,058
0
1,354
74,783
35,270
19,519
37,503
35,098
118
124.4
127.5
皆増
0
0
26.3
23.5
0
211.6
123.4
133.2
85.3
115.1
114.7
(農村整備)
9.農道整備
10.農業集落排水
11.農村総合整備
12.農村振興
うち農村振興総合整備
13.中山間総合整備
14.その他
(35.7)
330,223
86,267
113,680
26,203
24,641
13,503
66,045
13,387
(30.5)
233,311
62,166
79,077
15,863
25,259
15,149
50,946
0
(41.6)
124,047
36,058
17,551
14,014
5,632
3,080
32,068
18,724
(33.6)
357,358
98,224
96,628
29,877
30,891
18,229
83,014
18,724
108.2
113.9
85
114
125.4
135
125.7
139.9
(農地等保全管理)
15.防災保全
(1)直轄地すべり
(2)国営総合農地防災
(3)農地防災
(4)農地保全
(5)農村環境保全対策
16.土地改良施設管理
17.その他
(12.3)
113,594
95,079
5,980
32,349
35,365
12,145
9,240
14,221
4,294
(14.3)
109,435
109,435
6,900
44,319
36,037
11,592
10,587
0
0
(10.3)
30,688
8,757
0
0
5,072
2,453
1,232
16,812
5,119
(13.2)
140.123
118,192
6,900
44,319
41,109
14,045
11,819
16,812
5,119
123.4
124.3
115.4
137
116.2
115.6
127.9
118.2
119.2
注:百万円単位に四捨五入のため、計が合わない場合がある。
田川水系農業利水協議会の「ふれあいまつり」 |
小学生に農業用水の役割をPR
田川用水土地改良区、徳次郎新二宮用水組合、上金井土地改良区、田川中部土地改良区、給分用水土地改良区、細工瀬堰用水組合で構成する宇都宮市田川水系農業利水協議会(会長・入江陳夫)は、去る9月7日、「田川用水堰ふれあいまつり」を市内中心部を流れる田川の河川敷で開催した。
全国で展開されている「21世紀土地改良区創造運動」の一環として、次世代を担う子供達に農業用水の役割や環境保全の大切さを知ってもらおうと、同協議会が行った初めての祭りであり、田川流域の横川地区の小学生と保護者約100人が参加した。
あいにくの小雨が降る中、参加者は、入江会長から田川用水の大切さについての話を聞いた後、堰を水切りしての魚や虫の捕獲や観察をしたり、鬼怒川漁業協同組合から提供されたマスのつかみ捕りに元気いっぱい挑戦した。魚の捕獲では、シマドジョウ、オイカワ、ウグイ、マブナ、ハヤといった数種の魚が捕らえられたことから、漁協の石川恵庸さんがそれぞれの魚の説明をし、子供達も熱心に聞きいっていた。
魚のつかみ捕りなどのイベントは、各地で行われているが、山間部の支流が使われていることが多く、今回のように一級河川をそのまま使い、まして市街地の中心部で実施されたのは全国的にも珍しいと思われる。
なお、このイベントは、宇都宮市横川地区市民センター、宇都宮市横川地区中部青少年育成会が共催し、栃木県河内農業振興事務所、宇都宮市、栃木県土地改良事業団体連合会、鬼怒川漁業協同組合の協力で実現した。![]()
地球人会議シンポジウム |
わが故郷のこころを考える
シンポジウム「わが故郷のこころを考える〜都市と農村の共生と対流を求めて〜」は、9月7日午後1時30分から、東京都港区のニッショーホールにおいて一般人や関係者等約700人が参加して開催された。
主催は、食料・環境・ふるさとを考える地球人会議全国ネットワーク、全国土地改良事業団体連合会、都道府県土地改良事業団体連合会、全国地方新聞社連合会で、農業農村の抱える問題は、もはや生産者だけの問題ではなく、安全で安心な食料の供給基地として、また、都市住民の心のふるさとでもある大切な農村を支えていくため、都市住民に何ができるのか、いま何をしなければならないのか、という問題を議論する目的で開催された。
オープニングでは、主催者を代表して梶木全土連会長が「都市と農村の方々が、それぞれの立場で共生と対流を進めるためにはどうすればよいのか、考えていただく契機になれば幸い」と述べられた。本プログラムは、(1)基調講演、(2)アトラクション、(3)パネルディスカッションの3部で構成。総合司会にキャスターとしてマスメディアを舞台に活躍されている草柳文恵氏が担当して進められた。
基調講演では、評論家の竹村健一氏が「農業や農村と共にある、これからの日本」と題して農林水産省農村振興局長の太田信介氏との対談形式で講演され、竹村氏が生産者の高齢化や担い手が不足していることに触れ、「生産者らは、都会の人が農業をやることを拒んではいけない。」と注文。今後の農業について「生産だけでなく、環境を創出する役割がある。」などと述べられた。
次のアトラクションでは、歌手の井上あずみさんが「故郷のこころを歌う」と題したミニコンサートを行い、「となりのトトロ」の主題歌などを熱唱した。
パネルディスカッションでは、 社団法人農村生活総合研究センター主任研究員の安倍澄子氏、テレビキャスターの須磨佳津江氏、(株)エピ・マガジン代表取締役統括編集長の藤丸順子氏、那須野ケ原土地改良区連合事務局長の星野恵美子氏の四氏をパネリストに、農山漁村女性活動推進機構理事長の大島綏子氏がコーディネーターとして、都市と農村の現状、都市から見た農村・都市が農村に対してできることなどをテーマに意見を交わした。「都市の心を持つことが豊かだという考えは、今、ゆり戻しがきている」、「農産物の加工販売など農村地域の女性による起業が増えており、期待できる」などと意見交換。都市との共生が農村の活性化につながるとの認識で一致し、都市住民は、農村のことで何か知りたいときは、土地改良区に連絡して見るのも有効な方法とまとめられた。
水の作文コンクール栃木県審査会優秀賞 |
「自然の恵み」
矢板市立片岡中学校 3年 阿 美 裕 子
私の家は、何代も続く稲作中心の専業農家です。苗作り、田の水張り、田植え、生育と稲は水なしでは作れない作物ですから、どうしても水との関わりが深くなります。ものの本を読むと、約1キログラムの米を作るためには、1トンの水が必要となるそうです。しかも、水質や水量が米の出来、不出来に影響してくるのですから、我が家にとって水の問題は、そのまま死活問題です。
昨年、今年と私が住む地方は、春先、水不足に襲われました。今年は、ゴールデンウィーク前から雨が降り出して何とか間に合いましたが、昨年は、なかなか雨が降らず、ゴールデンウィークになっても田植えができなかった農家があったそうです。幸い我が家は、持っている山にため池があるので、余り影響は受けませんでしたが、頼みにしていた上流にあるダムの貯水量も底をついて、近隣の多くの稲作農家は、しばらくの間かなりのパニック状態だったそうです。それでも、水源に近い私たちの地方はまだよかった方で、下流域ではもっと深刻で、おおきな影響が出たようでした。
稲作農家は、水と運命を共にしているのです。
ところで、私の住む矢板市は、おいしい水の産地として知られています。それはおいしい水のお陰です。
矢板市のシンボルでもある高原山は、自然に恵まれています。高原山の水系には、「日本名水百選」に選ばれた塩谷町の尚仁沢のようにおいしい水がたくさん湧
き出ています。高原山の豊かな森林が自然のダムとなって、水を蓄え、ろ過されて、ミネラル分を多く含んだおいしい、そしてきれいな水を絶え間なく私たちに供給してくれているのです。
二年生の終わりに、国語で「調べたことをもとに文章をまとめる」という授業がありました。私は、我が家と水との関わりを考えて、「水」をテーマに学習を進めることにしました。その中でビデオを見ていたら、農業用水の使いすぎで中国の黄河が断流してしまった
こと、トルコとシリアのユーフラテス川をめぐる水問題、水不足による農地の砂漠化の問題、日本の清流の危機の問題などが出てきました。その中でも、私が、一番身につまされたのは、四国の四万十川を例に取った清流の危機の問題でした。森林の荒廃が原因で、下草が生えず、保水能力の低下した森から多量の土砂が流れ込んで、日本有数の清流が水質や生態系の危機を迎えているというのです。山の保水能力が低下すれば、洪水の原因にもなります。また、土砂が流れ込んだ川は、浄化能力が低下し、清流を維持することはできなくなるのです。この原因は、林業を生業とする人が減って、森林の間伐が十分に行われないからなのです。結局、人間の身勝手が自然を破壊し、気づかぬうちにかけがえのない水まで汚す結果になったのです。ビデオを見ていて、私は、宿泊学習で行った高原山の森林を思い出しました。杉やヒノキの間伐が十分に行われていないところがあったからです。それは、近い将来、私たちが使う水が確実に汚れていくことを示しています。そして、それは我が家の稲や作物にも密接につながるのです。私は、背筋が寒くなりました。
私たち一人一人が行うことも、その一つ一つが自然に、ひいては水にも影響を及ぼします。その責任の重さを私たちの一人一人がもっと自覚すべきなのではないでしょうか。私は、近い将来、農業と林業を継ぐことになりますが、自然とうまく付き合えるようになりたいと思います。私は、自然から受ける恩恵を次の世代まで伝えたいです。そして、恩恵を受けるだけでなく、自然にやさしく、恩恵と感謝を返せるようにしたいのです。
水の問題は、大きくなりすぎて、国単位の取り組みが必要なものもありますが、基本は、人間一人一人の取り組みです。その思いがつながったとき、水は守られるのだと思います。
土地改良水利施設の維持管理 |
松やん ようッ。理事長居るかいッ。 理事長 誰かと思ったら松やんじゃないか。どうしたんだい朝っぱらから。鼻メドふくらがしてョ。つっ立ってねぇで、まァ座れや。 松やん どうもこうもねえッ。改良区の賦課金値上げするってほんとかいッ。今はハァ何だって値下げの時代だんべ。寿司だって牛丼だってみーんな値下げだんべ。東京の偉いお役人だって、月給値下げだよッ。コシヒカリ、今いぐらだが知ってっぺェ。
今、世の中不景気なんだ。オラ家の娘はリストラだァ。スーパーさ勤めていたのに、こねーだ首だ。やんなっちゃぁー。理事長 落ち着けッ。そんなに一遍に喋べんじゃねぇッ。口がらキタゲ飛ばして汚ねぇな。アッチ向いて喋れッ。
なになに、賦課金値上げだと。誰ぁれもそんなごど喋っていねェ。松やん スットボケだって駄目だッ。オラァ、理事の竹やんから聞いたんだ。バガなごどすんじゃねぇって言いに来たんだ。 理事長 それは、オメェの聞き違いだなァ。理事会で話には出たが、決まったわげじゃねえ。決まりっこねぇッ。 松やん ええかげんなごど言うんぢゃねぇッ。
そんな話が出ること自体おかしかんべ。火のねぇとっこから煙は出めえッ。ちゃぁーんと説明せねぇーと、承知しねえッ。理事長 落ち着いて、ようっく聞け。
それはなァ、こういう訳だ。松やん あァそうか、そういう訳か。 理事長 まァだ何にも喋っちゃいねぇ。このバガヤロ。
土地改良で造った、堰だの水路だの揚水機場だのイッパイあっぺ。
これらを水路施設と言うんだよ。松やん そんなことぐれぃ知ってらい。オラ家の西にも堰があらァな。
ごみが引っかかって仕方がねェ。毎日毎日ごみ上げしてらァ。
銭はもらってねぇよ、どっからも。理事長 それは感心ご苦労さん。その内ええごどあっぺがら続けてくれや。ごみの話は、後にすっぺェ。 松やん 誤魔化すんじゃねえッ。話をそらすなッ。 理事長 ミッチリ説明すっから、ようっく聞けョ。
全部の施設を改良区が維持管理していると思いねェ。松やん うン、思った。それでどうした。 理事長 施設なんてもんは、15年も20年も経てば、ガタが来るもんよ。オメェの家だってそうだんべ。大分ガタ来てっぺェ。早く立て替えろ、台風で飛ばされねぇ内によぅ。 松やん 大きなお世話だ、黙ってろッ。
理事長だってガタ来てっぺッ。入れ歯に老眼鏡、腰だってピーンてわけにゃァいかめぇ。あっちの方はハァ駄目だんべェ。理事長 大きなお世話だ、黙ってろッ。 松やん 施設の話はどうしたんだい。話をそらすなッ。 理事長 そらすのはそっちだんべ。コミッチリ教えてやっからようっく聞けよ。土地改良で造った施設は、農業者だけのもんぢゃ無いと思うんだよ。 松やん 何言ってんだい。オレらが造ったんだから、オレらのもんだんべ。 理事長 そらァそうだが、チーント違うんだなァ。
水利施設というのは、地下水の涵養だの生活用水だの防火用水だの親水だの環境だの多面的機能を発揮しているんだよ。
施設の機能を維持管理して行くちゅうことは、食料の安定供給確保、農村の振興、などなど、すっごく大事なことなんだ。
ところがだ。農家数の減少だの農家所得の減少だの社会情勢の変化だので、改良区の財政面でも管理体制面でも脆弱化しつつあるわけだ。松やん どこで教わったか知んねぇが、偉そうなこと喋って。ケムに巻く気か。ほんでどうしたんだい。それから先は。 理事長 ナンダカンダァ言ったって、改良区が施設の管理をしなくちゃなんねぇことは確かだ。
コンクリート構造物だの機械設備、電気設備なんてのは、皆んな耐用年数が違うわけだ。
そいつらを、どうやって維持更新すっか、年次計画を立てて、計画的にやってるわげだ。
早いうちに直せば、安い銭で済む。ボッコレでがら直せば高くつく。
オメェの田植え機と同じだ。
予防保全、事後保全と言うんだが、オメェに判るかなァー。判んめえぃなァー。松やん バガにすんないッ。判るわィ。 理事長 オメェは、子供ん時から頭悪りがったもんなァ。
小学校中途退学だがら、仕方ねェ。松やん バガにすんないッ。小学校4年まで行ってらい。 理事長 そういうのを中途退学と言うんだ。コゲヤロ。 松やん うるせえッ、黙ってろッ。
理事長のボッコレ演説なんか聞きたがねェが聞いてやる。先を続けろ。それからどうした♪。それからどうした♪。ペペンノペーン♪♪。理事長 管理をするのに、銭が掛がって仕方がねえ。
改良区には銭が無ぇ。無ぇもんは払えねぇ。こんな理屈は昔っから決まってっぺ。松やん あだりめだ。無ぇもんからは取れめぇ。 理事長 ほんでだ。賦課金アップという方法もあるが、ほんなごどやってみろ、オメェみでいに怒鳴り込むヤツばっかしだんべ。
だがら、アップは出来ねェ。無理な話だ。松やん あだりめだ。理事長も少しは頭いいんだナ。 理事長 そんでだ、公的支援、行政負担しかねぇと思うんだ。
なんちったって、多面的機能があるわげだからョ。
更にだ、管理水準、管理体制、費用分担のあり方という、とってもコムツカシイ問題を、毎日毎日、検討に検討を重ねているわげだ。バガじゃ出来ねえ仕事だどォ。松やん ケントウだのボクシングだの、オレは嫌いだ。サッカーが好きだ。コウテキシエンちゃ何だい。スーパーで売ってるかい。 理事長 まァ、市役所だの役場から銭出してもらう他あんめ。ということだな。 松やん そら、いい考えだ。隣の梅やん高校終って4月から役場サ勤めてっから、オレからも頼んでみっぺが。 理事長 チントはご利益あっかも知んねぇが、オレに任せろ。オレは理事長だ。 松やん フンッ、またまた偉そうな顔して。ノボセちゃ困るぜ。 理事長 とごろがだ、役場も不景気で銭が無い。簡単には銭出さねぇ。 松やん ほんじゃぁ、しゃぁんめ、八方塞がりだんべ。どうする気だい。 理事長 だがら大変なのよ。どうすっぺが、こうすっぺが毎日毎日大変なんだ。あっちさ行ってペコペコ、こっちさ行ってペコペコ、頭の痛いことばっかしだ。 松やん そんで理事長、頭禿げちゃったんだ。気の毒にィ。 理事長 うるせえッ、黙ってろッ。
オレの懇切丁寧な説明聞いて、ようっく判ったんべ。早く家サ帰って、飯でも食えッ。朝飯未だだんべ。松やん 理事長のヘボクソ説明聞いて、いぐらが判ったような気がする。
ほんじゃぁ、理事長に任せる。宜しく頼むョ。
少ぅし腹へった。お茶もお菓子も出ながったけど、ごちそうさんッ。
ほんじゃぁ、さいなら、ニコニコバァーイ。
〔鬼怒中央土地改良区連合〕
〔事務局長 岩 本 大〕
図 書 案 内 |
土地改良法改正の要説
昨年改正された土地改良法は、環境との調和への配慮、地域住民の意向の反映など新たな時代にふさわしい内容となり、本年4月1日から施行されたところであります。
全国土地改良事業団体連合会では、この度の法改正の趣旨や改正までの経緯、改正関係通知、新旧対照表、イメージ図等の関係資料一式に、運用に係る様々な疑問をQ&A形式で分かりやすく解説した一問一答編を加え「土地改良法改正の要説」として発行することと致しましたので、土地改良事業に携わる関係者に広くご活用願いたく発行のご案内を致します。
◆規 格
装 幀 等:A4版 約260頁
発行予定:平成14年10月中旬
頒 価:2100円(本体価格2000円、消費税100円)
送料を別途申し受けます。
◆購入手続
ご購入を希望される方は、本会指導部指導課にご
連絡ください。
TEL:028-660-5731 FAX:028-660-5739
本紙へのご寄稿のお願い |
本紙「栃木の土地改良」の編集事務局では、本紙へのご寄稿を募集しております。会員の皆様の出来事につきましても、なるべく多く掲載したいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
なお、会員に関する記事につきましては、概ね次のとおりです。ご寄稿いただくか、又は情報をお知らせくださるようお願い申し上げます。
◆事業の竣工式
◆土地改良区の合併等
◆土地改良区の表彰、その他優良事例等
◆代表者の叙勲、褒章、表彰等
◆代表者の訃報
◆紀行文・エッセイ等
なお、これらの場合は、写真をご提供いただければ、可能な限り掲載したいと存じますので、併せてお願い申し上げます。
さらに、紙面の都合上、掲載時期を変更したり、文章を修正する場合がありますので、ご承知願いたく存じます。
配布部数の変更や苦情につきましても、編集事務局へご連絡ください。
編集事務局 栃木県土地改良事業団体連合会
総務部総務課・篠崎又は大島
TEL:028-660-5701 FAX:028-660-5709
平成14年9月主要行事報告 |
日 行 事 3〜4 農業集落排水施設維持管理技術(水質管理I)研修会 4 関東ブロック換地事務指導研究会・異議紛争地区処理対策検討会 5 ふれあいの郷づくりセミナー2002 5 生活改善普及員及び農業集落排水事業担当者研修会 7 田川用水堰ふれあいまつり 7 地球人会議シンポジウム「わが故郷のこころを考える」 9〜13 関東ブロック土地改良施設管理指導研修会(前期) 10 都道府県土地改良事業団体連合会事務責任者会議 12〜13 農村計画研修会(第24回現地研修集会) 12〜13 換地計画指導者実務研修会(県央地区) 18 関東一都九県土地改良事業団体連合会協議会事務責任者会議 19〜20 農業集落排水施設運営東日本ブロック研修会 19〜20 土地改良施設管理指導・土地改良相談事例集作成ブロック検討会 24 農業農村整備技術強化対策事業第1回関東ブロック研修協議会 27 関東ブロック農業集落排水事業技術検討会議 30〜4 関東ブロック土地改良施設管理指導研修会(後期)
表紙写真説明 |
表紙の写真『そば打ち』
○撮 影 者
我 妻 典 明 氏(塩谷郡藤原町在住)
○撮 影 地
塩谷郡藤原町地内
○コ メ ン ト
平成13年度「美しいとちぎのむら写真コンテスト」
景観保持・文化部門で優良賞に輝いた作品です。
審査員の講評は、「伝統の農作業を捉え、人物をやや右に置いたバランスの良さが評価されます。欲を言えば、おばあさんの顔が隠れていなければもっと良かったです。」ということでした。
蕎麦の実を落としている様子の写真ですが、むら興しや健康食としも注目されており、一つのブームになっている感があります。このように丹念に仕上げられたお蕎麦は、間違いなく美味しいと思います。