『水土里ネットとちぎ』は本会の愛称です

『家族で収穫』
−主な内容−

第27回全国土地改良大会が新潟市で開催

平成17年度予算概算要求等に係る説明会

平成17年度農業農村整備事業費概算要求

三部会の合同会議を開催

全国ため池等整備事業推進協議会総会を開催


ふるさと栃木フェア2004

土地改良区強化対策に関する調査報告書(その2)

平成16年10月主要行事報告

表紙写真説明



第27回全国土地改良大会が新潟市で開催
 「トキめく未来、水土里のふるさと」をテーマに、第27回全国土地改良大会が全国水土里ネット及び水土里ネット新潟の主催、農林水産省、新潟県、新潟市の後援により、去る10月5日、新潟県新潟市の朱鷺メッセ「ウェーブマーケット」において、全国から約4300名が参加して盛大に開催され、本県からは、県職員、土地改良区役職員、本会役職員等40名が参加した。


 大会開催の主旨は、農業農村整備の重要性と地域資源管理者である「水土里ネット」の役割を広く国民にアピールするとともに、我が国の農業・農村の展開方向を考え、土地改良関係者の更なる意識の高揚を図るとしている。
 記念式典は、オープニングで軽快なリズムに乗って新潟県農業の今昔がスクリーンに映し出された。午後1時、司会者が開会を告げた後、牧野功平水土里ネット新潟副会長の開会宣言で始まり、国家斉唱、磯部忠三郎水土里ネット新潟会長の開催県挨拶、野中広務全国水土里ネット会長の主催者挨拶、平山征夫新潟県知事と篠田昭新潟市長の歓迎挨拶があり、中條康朗農村振興局次長が農林水産大臣祝辞を代読された。
 来賓紹介と祝電披露後、土地改良事業功績者の農林水産大臣賞6名、農村振興局長賞17名、全国水土里ネット会長賞47名の表彰が行われた。本県からは、全国水土里ネット会長賞を入江陳夫田川用水土地改良区理事長が受賞された。
 続いて、今回が2度目となる21創造運動大賞の表彰に移り、9土地改良区に野中会長から表彰状と副賞が伝達された。
 次に、平成15年度農業農村整備優良地区コンクール受賞地区16地区と、全国5都市で開催した「100万人都市水土里ネットのシンポジウム」がスライドで紹介された。
 基調報告では、中條農村振興局次長が、農業農村整備事業を巡る最近の情勢について「食料・農業・農村基本計画の見直しなどの農政の動向」、「平成17年度概算要求を中心として農業農村整備の展開方向」、「土地改良区の期待」の3点について説明した。
 引き続き、水土里ネット西蒲原職員の後藤慎一氏と水土里ネット亀田郷の越山直子氏が「水土里という農村の地域資源を守り育み、次世代に引き継いで行くことの役割を担う我々が、地域住民や関係団体とともに、21創造運動を通じて、積極的に発信し行動してゆこう」と大会宣言を行った。
 ここで、主催者より緊急提案があり、国の礎となる農や食に関わる重要政策は、国の責務として確実に推進されるよう強く要請することの決議を満場一致で採択した。
 次期開催県紹介では、山形県のPRビデオが上映され、大会旗が水土里ネット新潟から全国水土里ネットへ、そして水土里ネット山形へと引き継がれたところで、岡崎水土里ネット山形会長が挨拶し、「命の最上川 うるおう大地 夢かがやいて」をテーマに、来年10月26日に山形市で開催したいと述べた。
 いよいよ大会も大詰め、今期大会の成功を祝し、そして次期大会の成功を祈りながら、原田一實全国水土里ネット副会長の発声により万歳三唱が行われた。結びに徳茂徳一水土里ネット新潟副会長が閉会の挨拶を述べて式典を滞りなく閉幕した。
 本県参加団は、式典当日の5日から6日にかけて新潟県内の農業農村整備事業等視察を実施した。


全国水土里ネット会長賞
入江陳夫氏の略歴

昭和2年3月生まれ、77歳。宇都宮市屋板町在住。昭和40年4月から田川用水組合役員、昭和61年9月の田川用水土地改良区の設立と同時に理事長に就任し、現在に至る。平成5年7月から宇都宮市土地改良協議会副会長、平成6年8月から宇都宮市田川水系農業利水協議会長、平成10年4月から利根川水系農業水利協議会栃木県支部副会長を務める。
他に、昭和58年5月から平成15年4月まで宇都宮市議会議員、昭和50年から平成12年までの間に通算して13年間宇都宮市農業委員を務める。


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平成17年度予算概算要求等に係る説明会
 栃木県の主催による「平成17年度予算概算要求等に係る説明会」は、去る10月5日、栃木県土地改良会館において、県及び市町村の担当者並びに管内代表の土地改良区理事長等約100名が参集して開催された。
 当日は、国から岩村和平農林水産省農村振興局整備部設計課技術調査官、安田憲司同計画部農地計画課課長補佐、田中玄太郎関東農政局整備部水利整備課長、高橋徹同設計課事業調整室長が、栃木県からは、橋本俊一農務部長、鈴木忠農村振興室長、大久保幸雄農地計画課長、大塚国一農地整備課長、各農業振興事務所農村振興部長等が出席して行われた。



平成17年度予算概算要求等説明会
「全体会議」


 第1部の全体会議では、鈴木農村振興室長の司会により進められ、橋本農務部長が「県、市町村、土地改良区、土地改良連合会等関係機関が共通認識のもとに農業農村整備事業を推進するため、国の施策等の説明会を開催した。」と主催者挨拶を述べた後、農林水産省から、岩村技術調査官が「財政構造改革の一環としての三位一体改革の中で、農業農村整備事業の一部も廃止補助金に掲げられている。これらの状況と農業農村整備事業の展開方向について意見交換を行いたい。」と挨拶を兼ねて総括説明し、さらに「平成17年度農村振興局予算概算要求の重点事項」、「地方6団体による国庫補助負担金等に関する改革案の概要」、「農林水産関係の補助金改革」、「地方交付税改革の概要」を説明された。その後、活発に質疑応答を行い、要望や意見交換が行われた。
 第2部の個別会議では、大久保農地計画課長の司会により進行され、参加者がそれぞれ意見・要望を行って、これに国が答える形で行われた。その主な内容は、地方6団体による国庫補助負担金等に関する改革案において廃止対象となっている県営経営体育成基盤整備事業と県営農道整備事業に関するものが大部分を占めた。「事業の実施に支障が出てくるのではないか」、「知らなかった。我々の意見を反映してもらうには、どうすればよいか」などと、真剣な議論が交わされた。


平成17年度予算概算要求等説明会
「個別会議」

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平成17年度農業農村整備事業費概算要求
 農林水産省は、8月末に平成17年度農林水産予算の概算要求を財務省に提出した。平成17年度は、概算要求基準で公共投資関係費が前年度比3%減、科学振興費を除く裁量的経費は前年度比2%減とすることが政府方針であるが、要求段階では、前年度比20%増が認められていることから、概算要求額は、3兆4212億円(前年度比12.1%増)として、内訳では、公共事業費が前年度比16.2%増の1兆7451億円を計上した。
 農業農村整備事業費については、対前年比15.7%増の9654億5900万円。うち重点4分野には7262億円を要求した。
 概算要求においては、農政改革基本構想に沿って農業農村整備を推進すること、また、土地改良長期計画に基づき施策の成果目標達成に向けて各事業を実施することをベースに、(1)既存ストックの有効活用を重視した保全管理、(2)農業の構造改革を推進する生産基盤整備、(3)地域再生に資する活力ある美しいむらづくりに重点を置いている。また、新基本計画策定の検討方向として、食料・農業・農村政策審議会がまとめた中間論点整理を反映する予算等を計上。公共(農業農村整備)から非公共予算へ67億4000万円をシフトした。なお、農村振興局では、中山間地域等直接支払制度の継続的な実施を要求し、268億円の交付金を盛り込んだ。
 全国知事会等地方6団体が提示した補助金削減案の対象となった経営体育成基盤整備事業については、農業構造改革の加速化に必須の施策として国が責任を持って実施する。また、農道整備事業については、省庁間の連携を推進することにより地域の自主性、裁量性が発揮できる制度を創設し、地域の視点に立った補助金改革を推進するという方針を示した。
 なお、概算要求の基本的な考え方等については、次のとおり。



平成17年度 農業農村整備事業概算要求の概要


I 平成17年度 農業農村整備事業 概算要求額


9,655億円 (対前年度比115.7%)
        うち「重点4分野」7,262億円

(単位:国費 百万円、%)
事   項
H16年度
予 算 額
(1)
H17年度
概算要求額
(2)
対前年
伸 率
(2)/(1)
農業農村整備事業
(うち農村振興局)
834,542
815,117
965,459
942,987
115.7
115.7
(農業生産基盤整備)
 1.かんがい排水
    うち国営かんがい排水
 2.経営体育成基盤整備
 3.諸土地改良
    うち新農業水利システム保全対策事業
    うち資源保全実験事業
 4.畑地帯総合農地整備
 5.国営農用地再編整備
 6.機構事業
 7.その他
458,706
222,241
179,815
91,180
8,029
2,000

55,461
21,728
29,250
30,817
550,204
273,861
230,695
106,822
10,524
3,000
1,000
64,364
26,010
33,933
34,690
119.9
123.2
128.3
117.2
131.1
150.0
皆増
116.1
119.7
116.0
112.6
(農村整備)
 8.農道整備
    うちふるさとのみち整備事業
 9.農業集落排水
    うち汚水処理普及対策助成金(注2)
 10.農村総合整備
 11.農村振興整備
 12.中山間総合整備
 13.その他
256,041
71,900

62,400

18,450
32,068
56,759
14,464
274,122
76,377
1,000
62,078
6,000
18,789
35,420
63,656
17,802
107.1
106.2
皆増
99.5
皆増
101.8
110.5
112.2
123.1
(農地等保全管理)
 14.防災保全
  (1)直轄地すべり
  (2)国営総合農地防災
  (3)農地防災
  (4)農地保全等
 15.土地改良施設管理
 16.その他
119,795
101,550
5,550
39,563
36,042
20,395
13,738
4,507
141,133
120,808
2,888
50,979
44,183
22,758
14,738
5,586
117.8
119.0
52.0
128.9
122.6
111.6
107.3
123.9
※注1:百万円単位に四捨五入のため、計が合わない場合がある。
※注2:汚水処理普及対策助成金は仮称である。



平成17年度 農村振興局予算概算要求の重点事項


1.農地・農業用水等を保全する政策の確立

 新たな食料・農業・農村基本計画策定に係る検討を踏まえ、農地・農業用水等の資源を将来にわたり適切に保全管理する施策体系の構築に向けて、保全管理に係る活動指針や資源保全手法の検討を行うとともに、施策の実効性などの検証等を実施。
 また、基幹水利施設等の農業水利ストックの有効活用を一層推進する観点から、多面的機能を適切に発揮するための管理体制を整備するとともに、施設の長寿命化のための機能診断及び予防保全対策の重点的な実施や、農業用水を有効利用するための事業を推進。
 さらに、耕作放棄地の増加等による多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において、農業生産活動等が継続されるよう、農業生産条件の不利を補正するための支援として、中山間地域等直接支払制度を引き続き実施。


 重点1
 農地・農業用水等の資源を適切に保全管理する
 施策体系の構築に向けた調査・検討


○資源保全実験事業【公共】〜新規〜  1,000(0)百万円
 農地・農業用水等の資源や農村環境を保全する施策の導入に向け、基礎調査を実施するとともに、一定の地域ごとに資源や農村環境を適切に保全する体制を実験的に整備し、資源保全活動を実践することにより、施策の実効性や現地適合性を検証。

○資源保全手法検討調査【公共】〜新規〜 210(0)百万円
  資源や農村環境の保全に係る地域の多様な実態を分析し、保全管理活動において取り組むべき内容等を示す活動指針や地域の実情に柔軟に対応しうる効率的・効果的な資源保全手法等を検討。

 重点2
 基幹水利施設等の既存ストックの有効活用の推進


○国営造成施設管理体制整備促進事業
 (管理体制整備型)【公共】〜拡充〜3,134(3,135)百万円
  農業水利施設の有する多面的機能を適切に発揮するため、農家だけでなく地域住民やNPO等の参画による、管理組織の構築や、管理の役割分担・連携を明確化した施設管理協定の締結などを促進し、国営造成施設等の管理体制を整備。

○基幹水利施設保全対策【公共】〜継続〜
2,244(1,564)百万円
  農業水利施設の長寿命化を図る観点から、基幹施設の機能診断を適切に行うとともに劣化の予測に対応した予防保全対策を重点的に実施。

○水資源活用地域共生事業【公共】〜拡充〜
53(32)百万円
  営農形態の変化や多様な用水需要に応じて、農業用水の転用が見込まれる地域において、既存農業水利施設を活用しつつ、適正な農業用水の確保ときめ細やかな転用水の創出のための計画を策定し、水資源の有効活用を促進。

 重点3
 中山間地域等直接支払制度の継続的な実施


○中山間地域等直接支払交付金【非公共】
26,800(16,800)百万円
  集落協定の締結に当たって、協定参加者の総意の下に集落協定の将来像を明確化し、その実現のための具体的な活動等を位置付けることにより、自律的かつ継続的な農業生産活動等の体制整備に向けたより積極的な取組を推進し中山間地域等における多面的機能を維持・増進。

2.農地の利用集積の加速化と遊休農地解消対策の推進
  効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の実現に向けた構造改革の加速化を図るため、生産基盤の整備と経営体育成のためのソフト対策の連携強化を図るとともに、遊休農地を解消するための支援策を実施。

 重点4
 構造改革加速化のための生産基盤整備とソフト対策の連携強化

○経営体育成基盤整備事業【公共】〜継続〜
106,822(91,180)百万円

  経営体の育成が見込まれる地域を対象として、区画整理をはじめ、農業用用排水施設、農道等の生産基盤等の整備を経営体の育成を図りつつ、地域農業のニーズに応じて柔軟かつ弾力的に実施。

○経営体育成促進【非公共】〜新規〜
 元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
  担い手への農地利用集積の一層の加速化・高度化のため、担い手に集積かつ連担化された面積の基盤整備事業の受益面積に占める割合を、事業完了時より更に一定以上増加させる場合に、土地改良区等が行う土地利用調整活動に対する支援を事業完了後も実施。

○畑利用高度化促進【非公共】〜新規〜
 元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
  地域水田農業ビジョンの実現を支援するため、麦・大豆・飼料作物に限定した現行の事業対象に地域振興作物等を新たに加え、基盤整備地区において生産団地を形成したものについて排水対策等のための促進費を交付。

 重点5
 遊休農地解消対策の推進


○遊休農地再生活動支援緊急対策【非公共】〜新規〜
 元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
  地域の実情を踏まえた多様な主体による遊休農地の再活用を促進するため、地域における遊休農地の実態や再活用に適した作物の選定・販路確保等の調査、援農ボランティアとともに実施する活動や農業者の組織が自ら行う作業に対する支援及び再活用のための土地条件整備を緊急的に実施。

 3.循環型社会の構築に向けた取組への支援
 バイオマス・ニッポン総合戦略に基づき、地域全体でのバイオマスの総合的な利活用に関する取組に対して支援するとともに、基盤整備を契機とした環境保全型農業を促進するための取組を支援。


 重点6
 バイオマスタウンの実現に向けた支援


○バイオマスの環づくり交付金【非公共】〜新規〜
18,212(0)百万円の内数
  地域で発生・排出される廃棄物系バイオマス等の有機性資源を、その地域でエネルギー、工業原料、材料、製品へ変換し、その地域で消費可能な限り循環利用する「バイオマスタウン」の実現に向け、関係者への理解の醸成、バイオマス利活用計画の策定、バイオマスの種類に応じた利活用対策、バイオマスの変換・利用施設等の一体的な整備を実施し、地域の創意工夫をこらした主体的な取り組みを支援。

 重点7
 環境保全型農業の促進に向けた基盤整備の工法の導入


○環境保全工法導入促進【非公共】〜新規〜
 元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
  基盤整備の実施を契機として環境保全型農業の確立に取り組む地域に対し、除草剤等の低減に必要な畦畔被覆等の工法を導入した際に、従来工法に比して掛かり増しとなる経費への支援等を行い、環境保全型農業を促進。

4.農山漁村における「地域自ら考え行動する」
  取組の促進
 農山漁村地域の再生に向けた地域の個性や創造力を活かした取組を支援するとともに、都市と農山漁村の共生・対流や農山漁村の魅力の向上を図るための施策を推進。


 重点8
 立ち上がる農山漁村・地域再生の推進


○農業参入支援基盤整備モデル事業【公共】〜新規〜 
200(0)百万円
 農地の有効活用と新たな担い手の育成による地域産業の再生を推進するため、構造改革特区制度やPFI的手法の活用などにより、農外企業の農業参入等を支援する基盤整備の仕組をモデル的に構築。

○活力ある山村地域等構築支援【非公共】〜新規〜
 元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
その他 6(0)百万円
  山村地域等において、農林水産業等の地域産業の振興や雇用の確保、定住の促進等を図るため、市町村などが企画する地域特性を活かしたモデル的な取組を支援し、新たな山村振興等の方策を確立。

 重点9
 魅力ある農山漁村づくりの推進


○むらづくり交付金【公共】〜拡充〜
10,000(10,000)百万円
  民間活力導入による農業農村の振興を図るため、生活環境整備に関する事業主体としてPFI事業者を追加するとともに、農林業及び農山村の総合的な整備を図るため、事業メニューに山村地域における生活環境整備の工種を追加。

○美の田園復興事業【公共】〜新規〜 1,000(0)百万円
  景観法の制定やゆとり・やすらぎを求める国民ニーズの変化を背景として、豊かな自然環境や美しい景観に恵まれた活力ある農村づくりに向け、景観に配慮した土地改良施設等の整備と併せた都市農村交流施設の整備などの取組を実施。

○景観に関する調査【公共】〜新規〜 65(0)百万円
  景観法の制定を踏まえ、景観との調和に配慮した農業農村整備事業を推進するため、モデル整備計画の策定と取組促進のための普及啓発、景観配慮等に係る基準書等の検討に資する調査を実施。

 重点10
 都市と農山漁村の共生・対流の一層の推進


○新グリーン・ツーリズム総合推進対策【非公共】〜拡充〜
元気な地域づくり交付金 59,157(0)百万円の内数
その他 176(172)百万円
  都市部のNPO法人等が農山漁村地域と連携して行う農作業ボランティア活動の企画・運営等に対して支援し、都市住民等の新たなニーズの取り込みや多様な取組主体の育成を図り、グリーン・ツーリズムを推進。

○市民農園の開設の促進
  平成15年4月から特区法により、地方公共団体及び農協以外の者による市民農園の開設を可能とする特例措置を実施しているところであり、この全国展開について、特区推進本部が9月中に行う可否の決定を踏まえて対応。

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三部会の合同会議を開催
開発整備部会
圃場整備部会
水利防災部会


 本会は、去る10月19日、宇都宮市内において開発整備部会・圃場整備部会・水利防災部会の三部会の平成16年度第1回合同会議を開催した。
 会議には、来賓に鈴木忠栃木県農務部農村振興室長、大久保幸雄同農地計画課長、大塚国一同農地整備課長を招いて、三部会員が出席して行った。
 会議は、後藤伊位本会副会長から欠員に伴う委嘱状の交付から始まり、三部会を代表して佐藤一巳圃場整備部会長が開会挨拶を述べられ、続いて後藤副会長、大久保農地計画課長が挨拶を述べられた後、斎藤文夫開発整備部会長を議長に選任して議事が進められた。
 議事は、第1号議案の副部会長を互選し、第2号議案平成15年度活動報告、第3号議案平成16年度活動計画を原案どおり議決、承認した。その後、協議事項に入り、平成17年度県農林施策並びに予算編成に関する建議要望事項を審議し、原案どおりの内容で承認された。
 その他、平成17年度農業農村整備事業費の概算要求の内容と本県における農業農村整備事業について、大久保農地計画課長から説明を受けて閉会した。
 なお、新たに選任された副部会長と新たに委嘱された部会員は次のとおり。

◆開発整備部会 (各敬称略)
副部会長 遠 藤   忠(矢板市)
部 会 員 柿 沼 尚 志(塩谷町)
◆圃場整備部会
副部会長 渡 邉 好 男(金田北部土地改良区)
部 会 員 森 下 誠 一(小倉堰土地改良区)
  〃   磯   秀 一(湯津上東堀土地改良区)
◆水利防災部会
部 会 員 吉 澤 新 市(石井川土地改良区)
  〃   黒 崎 道 男(板戸台土地改良区)


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全国ため池等整備事業推進協議会総会を開催
 全国ため池等整備事業推進協議会総会は、去る10月21日、東京都千代田区平河町のマツヤサロンにおいて、段本幸男参議院議員、南部明弘農林水産省農村振興局整備部長ほか多数の来賓を招き、全国の会員多数が出席して総会を開催した。
 総会においては、第6回ため池のある風景写真コンテストの入賞作品の発表があり、最優秀賞1点、優秀賞2点、全土連賞1点、特別賞30点が表彰された。最優秀賞には、佐賀県佐賀市在住の石橋照生氏の作品で同県千代田町において撮影した「菱の実取り」が輝いた。続いて、講演に移り、最初に農村振興局防災課の小林係長が冊子「ため池保全活動の手引き〜地域住民一体で行うため池保全〜」をもとに、ため池保全の手順を説明。その後、「堺市におけるため池維持保全活動」についての事例発表を大阪府堺市の松井利治農政部長が行った。
 さらに、ため池をめぐる情勢について、片桐農村振興局防災課長から、ため池整備事業の平成17年度概算要求と新規制度等の説明があった後、予定した7議案を原案どおり議決、承認して総会を終了した。
 なお、総会終了後、陳情団を編成し、平成17年度農業農村整備事業及びため池等整備事業予算の確保、新規採択要望地区の全面採択等を関係国会議員並びに農林水産省に要請した。

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「農業農村整備さなえまつり」を出展
ふるさと栃木フェア2004
 本会は、去る10月22日から24日の3日間にかけて、宇都宮市のマロニエプラザで開催された「ふるさと栃木フェア2004」に「農業農村整備さなえまつり」を出展した。
 このフェアは、栃木県の主催で開催しているもので、2000年は、全国都市緑化フェアの開催により取りやめられたが、1999年まで11回開催された「ふるさとマロニエフェア」を継承するもので、2001年より「ふるさと栃木フェア」と改められた。本会は、都市と農村との交流による農業農村整備事業の広報活動として1995年より出展しており、2000年の全国都市緑化フェアを含めて10回目を数える。
 今回の出展内容は、いのち・循環・共生をメインテーマに、農業農村整備事業と土地改良区の役割をPRするため各種のコーナーを設置し、来場者に対して特に環境及び生態系に配慮した農業農村整備事業をアピールするとともに、土地改良区の果たしている役割などについて啓発を行った。
 出展コーナーの一つの水田周辺水域に生息する身近な魚を展示した水槽コーナーでは、魚の名前当てクイズを行ったこともあって予想以上に子供達の興味を引くことができた。
 また、大人には、土地改良区から提供された新鮮な野菜類の販売コーナーにおいて好評を得ることができた。さらには、農業集落排水汚泥をリサイクルした石灰入り肥料にも、高い関心を寄せられ、一定の成果を実感することができたイベントとなった。
 フェアには、開催期間中、約10万人の県民が訪れ、市町村毎の物産店や農産物直売所での買物、各種の試食会、イベントなどを楽しんだ。



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土地改良区強化対策に関する調査報告書(その2)
−末端農業用排水施設(水路等)の管理の実態調査−


末端施設管理の現状と課題
2.現地実態調査結果の概要

茨城大学農学部助教授 安 藤 光 義

(1)はじめに
 現地実態調査は、アンケート調査で有効回答の得られた167の土地改良区のうち、得に末端施設の維持管理において特徴があると思われるものを、地域ブロックに一定程度配慮しながら20選定し、そこでのヒアリングを実施したものである。全体的には東日本が多いようにみえるが、北陸・東海以西を西日本とすれば両者はともに10ずつになる。北陸・東海を区切りとするのはアンケート調査結果でもみたとおりであり、それなりの区分として意味があると考えてよいだろう。
 20の土地改良区を細かく類型化することはできなかったが、アンケート調査結果で明らかになったような地域差の存在、末端施設管理の詳細な実態と問題点などについて、以下では各事例の簡単な紹介を通して触れてみることにしたい。

(2)東日本
(1)渡島平野土地改良区(北海道大野町ほか)
 −下部組織の機能的再編を目指す−

 渡島平野土地改良区の末端管理の特徴は、集落とも水系とも異なる「用水組合」によって担われている点にある。この用水組合は81あるが、集落数33を大きく上回っている。1組合当たりの農家戸数は最小で3戸、最大で60戸と非常にばらつきが大きい。これは開田によって開かれた単位が用水組合となっていることによる。そういう意味では、通常考えられているような北海道における用水組合とはやや性格が異なるかもしれない。この用水組合には土地改良区本区より10a当たり70円の支派線管理費が支給され、また、用水組合も独自に組合員から10a当たり定額の用水費を徴収して会計単位を形成している。簡易な補修はこの用水組合が行うが、大きな工事になると土地改良区本区が申請案件に優先順位をつけて、年間600万円の枠内で補修工事を実施するという関係になっている。
 管理施設の老巧化が進み、高齢化によって用水組合の管理体制も脆弱化しているため、ハード事業の実施とあわせて、現在ある81の水利組合を40程度に再編していきたいというのが今後の意向である。平場の条件が比較的よい水田地帯においては物的基盤の整備とともに組織再編を行うことで、管理労働力不足に一定程度まで対応していくことができるということなのであろう。そして、このような対応を追求することができるのが、平地農業地域が多い東日本に共通する特徴のように思われる。

(2)月形土地改良区(北海道月形町ほか)
 −下部組織独立型−

 月形土地改良区は6つの水系ごとに設立された地区運営員会の独立性が強く、末端施設の管理は全て地区運営委員会に任されているという状況にある。土地改良区本体の経常賦課金は10a当たり2,500円だが、これに地区ごとに維持管理費が上乗せされた金額が経常賦課金として徴収されている。補修工事も基幹水路、末端水路に関係なく全てを当該地区が負担するということになっている。6つの用水組合の連合組織と言うことができるような土地改良区である。
 ただし、6つのうち1つの地区は受益面積が小さいため地区運営委員会独自での維持管理は次第に困難になってきているという問題が発生している。そのため土地改良区本区は高圧洗浄機やバックホーを購入して地区運営委員会に貸し出したり、直営で補修作業を行ったりすることで維持管理のコストダウンを図っている。このように土地改良区本区が直轄管理に乗り出してきているというのも東日本では多くみられる事例であろう。

(3)蓬田村土地改良区(青森県蓬田村)
 −下部組織独立型・合併改良区−

 蓬田村土地改良区は4つの土地改良区を合併してできた土地改良区であり、現在もこの旧改良区ごとの独立性が保たれるかたちで維持管理が行われている。4つの土地改良区は全く水系が別であり、物理的条件としても一体的な維持管理が行われる必然性は全くない。土地改良区本区の共通管理経費として10a当たり1,200円のほかに、4つの地区管理運営委員会(旧土地改良区)がそれぞれの費用負担に応じて賦課金を上乗せするかたちで経常賦課金が徴収されている。このような改良区は、今後合併が進むにしたがい、増加していくことが予想される。

(4)奥入瀬川南岸土地改区(青森県下田町ほか)
 −改良区による耕作者直轄管理型−

 奥入瀬川南岸土地改良区は、施設のかなりの部分について土地改良区本区が維持管理を行い、それ以外の小用水路は農家が個別に管理するというタイプのもので、受益面積が1,000haを越えるにもかかわらず、末端管理組織が組織されていない非常に珍しい土地改良区である。末端施設の維持管理は各農家の自主性に依存しているため維持管理体制は非常に脆弱で、農家の経営廃止は歯抜け的な水路の放棄を生み出すことになってしまう。そのため改良区では、集落単位あるいは管理区単位での維持管理体制を構築したいとしているが、なかなか思うように話は進んでいないというのが現状である。土地改良事業によって水利施設は造成され、水田も整備されたが、それを維持管理する体制がないまま現在に至っているということであり、そうした状況を許すような状況が東日本の稲作地帯にはあったということかもしれない。以上のような歴史的経緯を踏まえると、こうした土地改良区は、経常賦課金水準を上げながら上下水道供給組織としての性格を強めて行かざるを得ないように思われる。

(5)鹿島台東部土地改良区(宮城県鹿島台町)
 −機能的に再編成された下部組織−

 鹿島台東部土地改良区は7集落ごとに管理区域を設定し、管理区域ごとに末端施設の維持管理を行うという体制が敷かれている。集落単位の組織化ではあるが、集落と水路が一体化しているがゆえのものではなく、水路管理を機能的に分担したという性格が強い。そのため、補修工事は管理区域ごとに行われるようなことはなく、土地改良区本区が一体的に行うという仕組みになっているのである。これは、同じ集落単位の組織化といっても西日本のそれとは大きく異なっており、注意しておきたい。また、補修工事については出来る限りコストダウンを図るべく、一部は土地改良区本区が直営で行うケースも生まれている。

(6)能代市河戸川土地改良区(秋田県能代市)
 −改良区による耕作者直轄管理型−

 ここも奥入瀬川南岸土地改良区と同様、土地改良区本区が個別農家に出役をさせて管理するかたちで末端施設も含めた水利施設を直轄管理しているタイプの土地改良区である。夫役は年7回。出役対象者に土地改良区が通知を行い、出役者を確認するとともに、作業ブロックごとに責任者を置いて維持管理作業を行っている。下部組織としての集落や管理区、水利組合といった末端管理組織はないという点がこの改良区の特徴であり、東日本に特徴的なタイプということができるかもしれない。こうしたタイプの改良区で常に問題となるのは、担い手への農地集積が進むにしたがい、維持管理作業の負担が担い手に集中してしまうとともに物理的にもこなし切れないような状況が容易に生まれてしまうということである。末端管理組織がないため柔軟な調整が図れないという点がこのタイプの改良区の弱点ということになるのではないだろうか。

(7)八竜町浜口土地改良区(秋田県八竜町ほか)
 −機能的に再編成された下部組織−

 八竜町浜口土地改良区の下部組織は、水系と集落が一致するかたちで6つの地区に分かれており、基幹施設は土地改良区本区が管理する一方、末端水路の維持管理は各地区ごとの出役によって行われているという改良区本区と下部組織の典型的な分業体制が敷かれている。ただし、地区割がなされているといっても月形土地改良区のように地区ごとに会計単位が設けられ、地区による自主管理が行われているわけではなく、会計は土地改良区本区一本という体制の下、改良区本区の指示によって維持管理が行われている点は注意しておきたい。そういう意味では鹿島台東部土地改良区と同じようなタイプの改良区とすることができるだろう。

(8)野川土地改良区(山形県長井市ほか)
 −機能的に再編成された下部組織−

 野川土地改良区も八竜町浜口土地改良区と同様、基幹施設は改良区本区が管理する一方、末端水路の維持管理は「維持管理会」という下部組織によって行われるという分業体制が敷かれている。ここで注目したいのは「維持管理会」が、集落などの社会組織とは無関係に、7つの水系という自然的地形的条件を第一に考慮した区割りによって、機能的な組織編成が行われているという点である。野川土地改良区の設立は昭和37年であるが、現在のような「維持管理会」による管理体制に移行したのは昭和49年以降であり、この点からも下部組織が土地改良事業の結果を踏まえて機能的に組織されたものであることを読み取ることができるだろう。それでも「維持管理会」では会ごとに独自の規約を定め、非農家も含めた全戸から賦課金を徴収しており、会計単位を形成しているという点で八竜町浜口土地改良区よりも柔軟性を有しているということができる。それはともかく、機能的に組織された下部組織という点に東日本の分業型土地改良区の特徴があるとすることだけは間違いない。

(9)五霞土地改良区(茨城県五霞町)
 −改良区による直轄管理・業者委託型−
 五霞町土地改良区は改良区本区が末端施設まで全てを直轄管理する改良区であるが、耕作者の出役では維持管理がまかない切れなくなったため、末端水路の維持管理は平成15年度から業者に委託しているという改良区である。これは土地改良区が上下水道供給機関的な性格を強めていった結果と考えることができる。10a当たりの経常賦課金も13,000円と高いが、賦課金は多少高くとも出役するよりはましという選択を組合員がした結果が、この改良区による直轄管理・業者委託型なのである。この上下水道供給機関的性格は平成16年度から用水がパイプラインとなることによって一層強まることが予想される。五霞改良区は都市化、兼業化が進んだ地域の土地改良区が辿る将来の姿を暗示しているということができるかもしれない。

(10)長井戸沼土地改良区(茨城県境町ほか)
 −改良区による直轄管理型−

 長井戸沼土地改良区も改良区本区が末端施設まで全てを直轄管理する改良区である。詳しい経緯は不明だが、ここも耕作者の出役では維持管理ができなくなったため改良区の職員3人が直接、農道の草刈りや水路の浚渫を行っているという状況にある。しかし、労力的にも限界に達しており、やがては五霞土地改良区のように末端施設の維持管理は外部委託にまわされる可能性が高いように思われる。その場合は、現在でも10a当たり14,000円と高い経常賦課金をさらに値上げする必要が生じると思われるが、果たして可能かどうか。徴収率は99%と高いが、稲作の収益性が悪化するなかでどのような状況になるか、非常に注目されるところである。個別的水利用が確立した(用水はパイプラインになっている)平地農業地域の土地改良区が将来的に抱える可能性がある問題を長井戸沼土地改良区の現状は示していると考えられるのではないだろうか。

(3)西日本
(11)滑川南部土地改良区(富山県滑川市)
 −下部組織=集落による維持管理体制−

 滑川南部土地改良区は自立性の強い集落(ここでは「旧町」)が改良区の下部組織として末端水利施設の維持管理に当たっているという典型的な西日本型の土地改良区である。集落は町内会として組織されており、そのなかに農業関係の仕事を取り扱う生産組合が制度的にも設けられ、ここが末端水利施設の維持管理を行っている。改良区本区から各生産組合に助成金等は支給されていないが、各生産組合は町内会からの経費と農家からの賦課金によって会計を持っており、30万円未満の補修工事についてはこの会計が対応するという関係ができている。ただし、30万円以上の補修工事については土地改良区本区の負担となる。いずれにせよ末端施設管理組織と集落とが、すなわち、機能集団と地縁集団とが完全に一致しており、維持管理体制が農村社会の構造に埋め込まれているという点が滑川南部土地改良区の最大の特徴なのである。

(12)松任市土地改良区(石川県松任市)
 −下部組織=集落による維持管理体制−

 ここも滑川南部土地改良区と同じく、土地改良区の下部組織と集落とが完全に一致している改良区であるが、松任市土地改良区の場合、それがさらに強固なものとなっている。というのは、ここは13あった土地改良区を合併した改良区であるが、この合併前の13改良区はそのまま旧村と一致していたからである。下部組織の運営は滑川南部土地改良区と同様で、維持管理経費については町内会からの予算と賦課金によってまかなわれている。また、100万円未満の補修工事は各下部組織の負担によって行われ、100万円以上は土地改良区本区による工事という区分が行われている。この仕切りが100万円というラインに置かれているのも、松任市土地改良区の下部組織の自立性の強さを示していると言うことができるのではないだろうか。

(13)豊橋南部土地改良区(愛知県豊橋市)
 −下部組織独立型・合併改良区−

 豊橋南部土地改良区は7つの土地改良区が合併してできた改良区であり、この旧土地改良区の機能が支所として現在も残っており、末端施設の維持管理費用も独自の基準で徴収するなど改良区本区とは独立した機能を果たしている。蓬田村土地改良区とほぼ同様の構造にあるとみてよい。ただし、滑川南部土地改良区や松任市土地改良区とは異なり、支所と集落とは全く別組織であり、機能集団と地縁集団とが一致しているわけではない。ここで集落にあたるのは53に分かれている管理班である(水田にかかわる水系47であり、末端用水施設の維持管理を行っているのは47班である)。実際の出役による維持管理はこの管理班ごとに行われている。そういう意味では「改良区本区−支所−管理班」という3段階組織になっているということができるが、下部組織独立型・合併改良区としても間違いないと考えられる。

(14)岡山土地改良区(滋賀県近江八幡市)
 −下部組織=集落による維持管理体制−

 岡山土地改良区も滑川南部土地改良区や松任市土地改良区ほど下部組織の自立性は強くはないが、土地改良区の下部組織と集落とが一致する維持管理体制がとられている改良区である。下部組織は集落と一致するかたちで7つに分かれており、ここが末端水利施設の維持管理を行っている。ここには改良区本区から1m2当たり4円の清掃助成金が支給されている。ただし、下部組織の会計単位の独立性はそれほど強くはなく、補修工事は原則として全てが改良区本区の負担において行われることになっている。

(15)日高川土地改良区(和歌山県御坊市ほか)
 −改良区による直轄管理(業者委託型)−

 日高川土地改良区は西日本には珍しく、耕作者の自主管理原則が崩れた結果、改良区による直轄管理が行われているところである。集落や水利組合等による管理組織を編成することができないまま、都市化、混住化が進んだ結果、用排水路は生活雑廃水の受け皿となってしまい、苦しい状況に追い込まれてしまっている。改良区職員2人が草刈りや浚渫などを出来る限りで行っているが到底追いつかず、手が回らないところは業者に委託することで乗り切っている。ただし、生活雑廃水の受け皿等となっていることから市から385万6千円の助成金をもらっており、これによって経常賦課金は10a当たり7,000円という水準に何とか抑えられている。一部の自治会では水路清掃にボランティアとして乗り出しているが、末端水利施設全体をカバーするような状況にはない。地域用水としての位置づけを獲得することができるか、それとも、生活雑廃水のための下水路的なものとなってしまうのかの分岐点に置かれているというのが現在の状況なのである。

(16)天神野土地改良区(鳥取県倉吉市ほか)
 −改良区による耕作者直轄管理型−

 天神野土地改良区は西日本には珍しく奥入瀬川南岸土地改区と同じようなタイプの維持管理を行っている土地改良区である。ここでは、基幹施設については「治井手作業日」を設定して耕作者の出役によって維持管理を行い、それ以外の末端水路については耕作者各自が維持管理を行うという分業体制が敷かれている。ただし、土地改良区が直接耕作者を組織しているわけではなく、耕作者は改良区の下に水系単位に置かれた26の工区に組織されており、治井手作業はこの工区単位ごとに分担を決めて行っているというのが実態である。「耕作者直轄管理型」としたのは、この工区が日常的な維持管理を担当していないためである。この治井手作業の出役者に対しては改良区本区から1人につき700円の出役賃金が各工区に支給されている。また、改良区本区は各工区に必要な機械を借り上げて有償で提供している。

(17)東郷町土地改良区(鳥取県東郷町)
 −下部組織=集落による維持管理体制−

 東郷町土地改良区は改良区本区が管理する施設は全くなく、末端水利施設も含めた全ての施設が19の集落によって維持管理されているという典型的な「下部組織=集落による維持管理体制」が敷かれている改良区である。集落では管理費の微収等は行われておらず、独自の会計を持っているわけではないが、末端施設の整備補修については改良区本区から原材料費の支給が行われており、維持管理費(1集落当たり4千〜7万2千円)と管理者手当てが樋門とため池の数に応じて集落に支給されている。僅かな金額ではあるが、こうしたお金を下部組織に流すことで維持管理体制を維持しているとすることができるだろう。

(18)板名用水土地改良区(徳島県上板町ほか)
 −改良区による直轄管理−

 板名用水土地改良区は日高川土地改良区とほぼ同様で、原則として水利施設は改良区本区が管理を行い(維持管理人4人に管理を委嘱)、耕作者は個人の水田にかかわる小水路のみを管理するという分業関係にある土地改良区である。ここが日高川土地改良区と若干異なるのは、恒常的水不足地域が管内にあり、そこには5つの灌漑組合が設立されており、そこだけは組合として維持管理が行われているという点である。この5つの灌漑組合には改良区本区から維持管理費用として総額46万2千円が支給されている。それ以外の個人耕作者には維持管理費は支給されていない。板名用水土地改良区も都市化、混住化が進んでいる地域にあるため生活雑廃水には悩まされており、現在1,005万円の維持管理費用の助成を関係町村から受けているが、用排水路が公共下水道の代わりをしているとして、助成金の増額を希望している。地域住民によるボランティア的な清掃活動も起こっていないことから、この改良区は将来的には生活雑廃水のための下水路的なものとなってしまうということなのかもしれない。

(19)朝倉郡夜須町土地改良区(福岡県夜須町ほか)
 −下部組織=集落による維持管理体制−

 この改良区はほ場整備事業の実施を目的に設立された改良区であり、当初から事業が終了すれば解散する予定であったとあるように、維持管理は36ある集落によって担われており、改良区本区は全くタッチしていない。各集落の自立性も高く、賦課金はそれぞれが独自の基準で徴収しており、会計単位は全く別個に設けられている。まだ、施設の老巧化等の問題は生じていないようであるが、仮に補修工事に補助事業の適用が必要な事態が生まれてくるとすれば、滑川南部土地改良区や松任市土地改良区のように事業実施の受け皿として土地改良区を残しておくことの意味はあるかもしれない。

(20)延岡市土地改良区(宮崎県延岡市)
 −下部組織独立型・合併改良区−

 延岡市土地改良区は平成14年に5つの土地改良区が合併して設立された改良区である。そのため蓬田村土地改良区と同様、旧土地改良区(現地では「支線」と呼んでいる)が下部組織としての独自性を保っており、経常賦課金も共通経費10a当たり2,000円以外は各支線単位に独自に賦課金を上乗せして徴収を行っている。会計区分もそれぞれ別個なのであり、維持管理適正化事業等の補修工事費も全て支線単位で実施するという仕組みがとられている。さらに、5つの支線はそれを構成する集落ごとに生産組合が設置されており、ここが末端施設管理組織となっている。言うなれば「改良区本区−支線−生産組合」という3段階組織となっているのであり、蓬田村土地改良区よりも、むしろ、「改良区本区−支所−管理班」という3段階組織をとっている豊橋南部土地改良区と同じ体制が敷かれているとみるべきかもしれない。こうした3段階組織は、土地改良区の合併によって今後ますます増えていくことが予想される。

(4)おわりに
 以上、東日本と西日本に分けて土地改良区の末端施設の管理状況を概観したが、東日本は「改良区による耕作者直轄管理型」を「機能的に再編成された下部組織」を有するようなタイプのものにどのようにして移行を図るかがポイントとなっているように思われる。追加的なハード事業の実施とあわせて機能的な下部組織の再編を進めることで、担い手への農地集積が進んでいく状況に対応できるような体制を整えていくことが当面の課題ではないだろうか。ただし、こうした方向は、潜在化していた維持管理コストを可能な限り縮減しながら顕在化させていくというものであり、その行き着く先は高い維持管理コスト支払いが必要な「改良区による直轄管理・業者委託型」ということになる可能性が高い。潜在化していた維持管理コストを可能な限り縮減しながら顕在化させていくというプロセスを進めながら、事態がそこまで進んでしまう手前でどのようなかたちで妥協を図ることができるかというのが東日本、あるいは、構造政策の主戦場となることが予想される平地農業地域の長期的な課題ということになるだろう。
 これに対し、西日本は「下部組織=集落による維持管理体制」に特徴があり、この維持管理コストの顕在化を押さえ込む体制がどこまで維持できるかということになるだろう。ここでの最大の課題は農家の高齢化や農家戸数の減少に伴う、夫役労働に出役できる「頭数」の減少である。この「頭数」の中に非農家や市街地の一般住民の参加を求めることができるかどうか、そのための地域的な取り組みを起こすことができるかどうかが当面の課題なのである。こうした取り組みが求められるのは西日本、あるいは、中山間地域の水田地帯ということになるだろう。
 繰り返しになるが、末端水路施設の維持管理状況をめぐる問題は次のように整理できる。すなわち、これまで集落に依存することで潜在化していた費用が、それではもたなくなってきたことによって顕在化してきているというのが末端水路施設の管理についての問題であり、これを非農家も含めた「頭数」の確保やボランティア出役の確保によって再度社会に埋め込むことで潜在化させた形での処理を目指すのか、あるいは、全てを顕在化させたうえで、可能な限りそのコストダウンを追求できるような維持管理体制の確立を、追加的なハード工事の実施も含めて目指すのか、という岐路に末端水路の維持管理問題は差し掛かっているのである。このどちらを選んで当面の対策を講じるかは、当該地域の社会構造と水利施設の整備水準との交錯点がどのあたりにあるかによって決まってくるとすることができるのではないだろうか。

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平成16年10月主要行事報告
行  事
5平成17年度予算概算要求等に係る説明会
5〜7第27回全国土地改良大会(新潟県)
7〜8土地改良施設管理指導・土地改良相談事例集作成ブロック検討会
10平成17年4月本会職員採用一次試験
13〜14関東一都九県水土里ネット秋季総会
14〜15平成16年度基幹水利施設管理技術者育成支援事業研修会
18平成16年度換地業務に係る知事感謝状贈呈式
18〜22平成16年度関東ブロック土地改良施設管理指導後期研修会
19本会開発整備部会・圃場整備部会・水利防災部会合同会議
21〜22栃木県農村総合整備事業促進協議会先進地視察研修
21平成16年度全国ため池等整備事業推進協議会通常総会
22〜24ふるさと栃木フェア2004
26〜29土地改良専門技術者育成講習
28団体営土地改良総合整備事業深沢大柿地区竣工式
28〜30農村環境技術研修「環境教育応用コース」
29関東地区農村総合整備推進連絡協議会総会

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表紙写真説明

表紙の写真『家族で収穫』

○撮影者
 井 伊 研 一さん
 (小山市在住)

○撮影地 小山市

○コ メ ン ト
 平成15年度「美しいとちぎのむら写真コンテスト」景観保持・文化部門で入選に輝いた作品です。
 タマネギの収穫の様子です。構図の取り方が難しいと思いますが、意表をつく上方から広角レンズを使って奥行きを出し、上手にまとめています。
 タマネギが整然と並べられており、丹精込めて作っていることが現れています。
 

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