『水土里ネットとちぎ』は本会の愛称です

『山里の竹煙』
−主な内容−

平成17年度農業農村整備事業費の概要

平成16年度土地改良区役職員研修会を開催

景観法運用指針について

田川沿岸地区の竣工式


お知らせ

お詫びと訂正

平成17年1月主要行事報告

表紙写真説明



平成17年度農業農村整備事業費の概要
 政府は、昨年12月24日の閣議で平成17年度一般会計予算の政府案を決定し、今通常国会に提出した。
 農業水産予算概算決定の総額は、2兆9672億円(対前年比97.2%)、公共投資関係費(地域再生交付金を含む)は、1兆4448億円(対前年比96.2%)となっている。三位一体改革への対応について、公共事業では、地方6団体の提案に係る2334億円の約半分の1184億円について対応。その内訳は、スリム化(地方向け補助金負担金の縮減744憶円)と交付金化(省庁連携強化に係る交付金化等440憶円)で、前年比95.7%の1兆3124億円となっている。また、非公共事業では、2年で250憶円を税源移譲、17年度は54億円を計上している。
 農業農村整備事業費は、7956億円(対前年比95.3%)で、うち重点4分野に5844憶円となっている。
 重要施策として、(1)、既存ストックの有効活用を重視した保全管理、(2)農業の構造改革を推進する生産基盤整備、(3)地域再生に資する活力ある安全で美しいむらづくりを提示した。新規拡充事項では、資源保全の実態把握等を実施する。「資源保全対策」(10億円)や農外企業の農業参入を支援する基盤整備等を実証的に実施する「地域・企業協働基盤整備推進対策」などを創設。また、「国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)」の継続・拡充などを図った。非公共へのシフト分(83億円)では、「バイオマスの環づくり交付金」、「元気な地域づくり交付金」などの非公共事業を新たに創設した。さらに、三位一体改革関係では、地方の自主性・裁量度を格段に向上させる観点から省庁の枠を超えた施策連携を強化し、「汚水処理施設整備交付金」、「道路整備交付金」(内閣府に予算を一括計上)、「むらづくり交付金」を創設・拡充した。また、事業のスリム化を図り、事業の採択要件を引き上げることにより、事業の重点化を図った。なお、大臣折衝事項の一つの中山間地域等直接支払制度の継続的な実施に222憶円を計上した。
 なお、概算決定のポイントについては、次のとおり。

平成17年度農業農村整備事業予算概算決定のポイント


1. 平成17年度農業農村整備事業予算概算決定額
7,956億円※1(対前年度比95.3%)
     うち「重点4分野※2」5,844億円

※1省庁連携強化に係る交付金化措置額を含む。
※2「基本方針2002」における「活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野


2. 基本的な考え方
 食料の安定供給や多面的機能の確保をはじめとする農業・農村の重要な役割が、一層効率的・効果的かつ持続的に発揮されることが重要であることから、「農政改革基本構想」(平成16年5月)の方向に即し、農業農村整備を推進する。

 施策効果を一層高めるため、施策の重点化・効率化を図りつつ、土地改良長期計画(平成15〜19年度)に基づき施策の成果目標達成に向けて各事業を実施する。
 平成17年度においては、特に、
(1) 既存ストックの有効活用を重視した保全管理
(2) 農業の構造改革を推進する生産基盤整備
(3) 地域再生に資する活力ある安全で美しいむらづくり

に重点を置く。
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月閣議決定)等を踏まえ、「成果重視の施策展開」、「選択と集中」、「「活力ある社会・経済の実現に向けた重点4分野」への重点化」、「国庫補助負担金改革」、「コスト縮減」等に積極的に取り組む。

3. 重点施策の内容
1.既存ストックの有効活用を重視した保全管理施策の推進


 新たな食料・農業・農村基本計画策定に係る検討を踏まえ、新規整備から保全管理・更新整備へ施策の重点を移す中で、農地・農業用水等の資源を適切に保全管理する施策の構築に向けた取組みを進めるとともに、基幹水利施設等の有効活用に向けた保全管理対策等の一層の推進を図る。


(1)農地・農業用水等の資源を適切に保全管理する施策体系の構築に向けた調査・検討
 農村の構造変化や農業構造改革の進展に対応し、農地、農業用水等の資源を、地域を基本としつつ適切に保全管理する施策体系を構築するため、資源保全の実態把握、保全手法の検討等を実施。

 主な事業
 ・資源保全実態調査事業【新規】 8.5億円(皆増)
 ・資源保全手法検討調査【新規】 1.5億円(皆増)

(2)基幹水利施設等の保全管理対策の推進
 基幹水利施設の有する安定的な用水供給機能等の確保を図るとともに、農業用水が有する多面的機能を適切に発揮するため、これまで蓄積されてきた基幹水利ストックの保全・更新整備を着実に実施し、併せて管理に係る土地改良区等の体制の設備等を推進。

 主な事業
 ・国営かんがい排水事業   1,914億円(106.5%)
 ・国営造成施設管理体制整備促進事業
 (管理体制整備型)【拡充】   31億円(100.0%)
 ・基幹水利施設保全対策     17億円(107.4%)
 ・水資源活用地域共生事業【拡充】
                0.5億円(166.7%)
 ・国営総合農地防災事業    441億円(111.4%)


2.農業の構造改革を推進する生産基盤整備の実施

 効率的かつ安定的な経営体が農業生産の大部分を担う農業構造の実現に向けて、農業の構造改革の加速化を図るため、ハード整備をソフト対策の連携の一層の強化を図るとともに、土地改良区の持つ土地利用調整機能の活用や多様な担い手の参入条件の設備等を推進する。


(1)構造改革加速化のためのハード整備とソフト対策の連携強化
 農地利用集積の一層の加速化のため、経営体育成の視点に立った農地整備を着実に実施するとともに、基盤整備事業完了後に行う土地利用調整活動や、地域水田農業ビジョンの実現に向けた排水対策等を支援。

 主な事業
 ・経営体育成基盤整備事業【拡充】
               851億円(93.4%)
 ・畑地帯総合農地整備事業  512億円(92.3%)
 ・元気な地域づくり交付金(非公共)【新規】
               466億円(皆増)の内数


(2)多様な担い手の参入条件の整備
 農地の有効活用と新たな担い手の育成による地域農業の再生・強化等を推進するため、官民パートナーシップの活用などにより、農外企業の農業参入等を支援する基盤整備等を実証的に実施。

 主な事業
 ・地域・企業協働基盤整備推進対策【新規】
   経営体育成基盤整備事業【拡充】(再掲)
           851億円(93.4%)の内数
   担い手育成農地集積事業(非公共)【拡充】
           154億円(81.9%)の内数
   農業参入促進基盤整備実証事業【新規】
           0.5億円(皆増)


3.地域再生に資する活力ある安全で美しいむらづくりの推進

 地域自らの発想による地域再生等の取組を支援するとともに、「人・もの・情報」が都市と農村で共生・対流する社会の構築等に向けて、国民共通の財産として景観や環境と調和した美しいむらづくりや、災害に強い安全で安心な農村の形成を図るための防災対策を推進する。


(1)地域自らの発想による地域再生の支援
 地域自らの発想による地域再生等の取組を支援する観点等から、汚水処理施設整備や道路整備に係る関係省が連携し、新たな事業を創設するとともに、農業生産基盤の整備と併せた農山漁村の生活環境の総合的、一体的な整備や、民間活力の導入などを進める仕組みの構築により、地域主体の個性あるむらづくりを推進。
主な事業
・汚水処理施設整備交付金(仮称)【新規】
   (農業集落排水施設) 100億円(皆増)
・道整備交付金(仮称〕【新規】
         (農道) 100億円(皆増)
・むらづくり交付金【拡充】 100億円(100.0%)
・バイオマスの環づくり交付金(非公共)【新規】
              144億円(皆増)の内数
・地域・企業協働基盤整備推進対策【新規】 (再掲)

※汚水処理施設整備交付金(仮称)と道設備交付金(仮称)については省庁連携強化に係る交付金化措置額を記載(以下同じ)。

(2)国民共通の財産として景観や環境と調和した美しいむらづくりの推進
 豊かな自然環境や美しい景観に恵まれた魅力ある農村づくりに向け、良好な農村景観の再生・保全に向けた地域住民等の活動や土地改良施設等の改修を支援し、その取組や景観形成の技術の普及啓発等を行うとともに、バイオマスの利活用や環境保全型農業の促進に向けた対策等を実施。

主な事業
 ・元気な地域づくり交付金(非公共)【新規】
(再掲) 466億円(皆増)の内数
 ・バイオマスの環づくり交付金(非公共)【新規】
(再掲) 144億円(皆増)の内数


(3)災害に強い安全で安心な農村の形成
 地震や集中豪雨等による自然災害が多発している状況を踏まえ、災害に強い安全で安心な農村の形成に向け、農業生産の維持、農業経営の安定等を図るため、豪雨や地震に起因する農用地等の災害や水質悪化等を未然に防ぐ防災事業を着実に推進。

 主な事業
  ・国営総合農地防災事業(再掲)
               441億円(111.4%)
  ・農地防災事業【拡充】  396億円(109.9%)


4. 事業の進め方の改革に向けた取組の推進

1.施策連携の強化を通じた地方の裁量度の拡大

 地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する観点から、省・局庁の枠を超えた施策連携を強化し、地域の視点に立った補助金改革を推進。

(1)省間の連携の強化
 汚水処理施設(農業集落排水施設及び漁業集落排水施設、公共下水道、浄化槽)及び道路(農道、林道、地方道)の整備に係る関係者の連携強化を図り、地方の裁量度を高める事業制度を創設。

 ・汚水処理施設整備交付金(仮称)【新規】
           (農業集落排水施設)(再掲)
    (農林水産省、国土交通省、環境省の連携)
                 100億円(皆増)
 ・道整備交付金(仮称)【新規】(農道)(再掲) 
(農林水産業、国土交通省の連携)100億円(皆増)


(2)局庁間の枠を超えた生活環境整備の実現
 農林水産業と農山漁村の総合的な発展を図るため、「むらづくり交付金」に、林野庁及び水産庁所管の生活環境整備に係る工種を追加し、農業生産基盤の整備と併せて農山漁村の生活環境の整備を総合的、一体的に実施できる仕組みを構築。
 ・むらづくり交付金【拡充】(再掲)
         100億円(100.0%)

2.事業の重点化
 国と地方の役割を見直す観点から、採択要件の引き上げ等により事業の重点化を更に推進。

(1)採択要件の引き上げ
 田園空間整備事業について、採択要件(総事業費)を引き上げ(団体営事業:0.5億円→2.0億円、県営事業:1.0億円→2.0億円)。

(2)生活環境整備の重点化
 中山間地域総合整備事業について、農村生活環境の整備を農業生産基盤の整備と関連するものに重点化(16工種→13工種に整理統合)。

3.ハードからソフトへの政策手段の転換
 地域における新たな政策課題に機動的に対応するため、公共予算の一部を非公共予算にシフト(83億円)し、非公共事業の創設を幅広い分野で実施。
 農業農村整備事業とこれらの新しい政策手段との一体的な実施により、バイオマスタウン構想や担い手への農地利用集積等の政策目的の実現を加速。
公共予算を活用し新たに創設を行った非公共事業
・バイオマスの環づくり交付金【新規】 72億円*1
・元気な地域づくり交付金【新規】等 11億円*2
4.コスト縮減の推進
 「農業農村整備事業等コスト構造改革プログラム」に沿い、(1)効率性の向上、(2)設計等の最適化、(3)調達の最適化、(4)地域特性の重視、(5)透明度の向上の視点から、平成19年度までに15%(平成14年度比)のコスト縮減を目指す総合的なコスト構造改革を推進。

*1 バイオマスの環づくり交付金のうち、バイオマス利活用施設の一体的整備に係る積算内訳の一部
*2 元気な地域づくり交付金のうち、農地基盤整備対策や農村振興支援対策に係る積算内訳の一部 等

5. 事業別概算決定額
(国費) (単位:百万円、%)
事   項 H16年度
予算額(1)
H17年度
概算決定額(2)
対前年伸率
(2) /(1)
農業農村整備事業
  (うち農村振興局)
834,542
815,117
795,591
777,073
95.3
95.3
(農業生産基盤整備)
1.かんがい排水
   うち国営かんがい排水
2.経営体育成基盤整備
3.諸土地改良
   うち新農業水利システム保全対策事業
   うち資源保全実態調査事業
4.畑地帯総合農地整備
5.国営農用地再編整備
6.機構事業
7.その他
458,706
222,241
179,815
91,180
8,029
2,000

55,461
21,728
29,250
30,817
451,916
225,618
191,445
85,117
9,058
2,400
850
51,214
23,128
28,085
29,697
98.5
101.5
106.5
93.4
112.8
120.0
皆増
92.3
106.4
96.0
96.4
(農村整備)
8.農道整備
9.農業集落排水
10.農村総合整備
11.農村振興整備
  うちむらづくり交付金
12.中山間総合整備
13.その他
256,041
71,900
62,400
18,450
32,068
10,000
56,759
14,464
219,724
62,538
52,200
14,802
27,303
10,000
49,977
12,904
85.8
87.0
83.7
80.2
85.1
100.0
88.1
89.2
(農地等保全管理)
14.防災保全
(1)直轄地すべり
(2)国営総合農地防災
(3)農地防災
(4)農地保全等
15.土地改良施設管理
16.その他
119,795
101,550
5,550
39,563
36,042
20,395
13,738
4,507
123,950
105,973
2,888
44,060
39,614
19,411
13,599
4,378
103.5
104.4
52.0
111.4
109.9
95.2
99.0
97.1
 注1:百万円単位に四捨五入のため、計が合わない場合がある。
 注2:「H17年度概算決定額」には、省庁連携強化に係る交付金化措置額(農道整備 100億円、農業
    集落排水 100億円)を含む。

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土地改良区役職員研修会を開催
 本会は、去る1月21日、栃木県土地改良会館において、平成16年度土地改良区役職員研修会を会員市町村及び水土里ネットの役職員等236名の参加を得て開催した。
 研修会には、大野敬治水土里ネットとちぎ専務理事が開会挨拶を述べた後、研修に入り、初めに、「土地改良をめぐる法律問題」と題して、本会の顧問弁護士の谷田容一氏が講演。平成7年度の顧問弁護士就任以来の法律相談の中から多いものを抽出し、(1)賦課金の長期滞納、(2)土地改良事業の工事妨害、(3)地区外農地への無断引水などの問題を解説した。


(研修1)講師 谷田顧問弁護士


 続いて、栃木県農務部農地計画課管理指導担当の津浦好一係長が「土地改良区の会計経理と役員の責務」と題して、土地改良区を検査する立場から適正な業務運営を確保するために、(1)役員の義務及び賠償責任、(2)会計事務の厳格な執行についてをテーマに講義された。


(研修2)講師 農地計画課 津浦係長


 さらには、農業マーケティング研究所長で東京在住のフリージャーナリストの山本和子氏が「土地改良区の起業戦略(女性起業と地域づくり)」と題して講演。土地改良区が地域で支持されていく組織になるためには、女性パワーを取り入れるよう積極的なアプローチが必要とし、今後の土地改良区は、農業用水等を管理する本来の役割に加えて農業の振興発展に寄与していくことが、国民から最も期待されているところであると熱い口調で語られた。


(研修3)講師 ジャーナリスト 山本氏

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景観法運用指針について
 景観法(平成16年法律第110号。以下「法」という。)は、都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進し、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境の創造及び個性的で活力ある地域社会の実現を図るため、景観に関する国民共通の基本理念や、国、地方公共団体、事業者、住民それぞれの責務を定めるとともに、行為規制や公共施設の特例、支援の仕組み等を定めた法律として、平成16年6月に成立、公布された、「景観」そのものの整備・保全を目的とするわが国で初めての総合的な法律です。
 この指針は、今後、景観政策を進めていく上での法の解釈・運用に係る国としての原則的な考え方を示すことにより、地方公共団体による各種の景観施設の円滑な展開に貢献すべきとの考え方から取りまとめられたものです。今後、社会経済状況の動向や法の改正等を踏まえ、適宣改正を行うものとしていますが、この指針は、地方自治法第245条の4の規定に基づき行う技術的な助言の性格を有するものです。
 以下では、景観農業振興地域整備計画に関する部分を抜粋して掲載します。

法の運用のあり方
景観計画
景観計画に定める事項

・個別事項についての考え方
 景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的事項
 農山村においては、自然の造形を背景として、気候風土に適した形で農林業を営む中で、それぞれの地域に固有の個性ある美しい景観がつくられてきた。このような地域の景観を保全・創出するための施策を講じるためには、地域の景観に配慮しつつ良好な営農条件を確保する観点を有する計画が必要となる。
 本事項は、農業振興地域(農業振興地域の整備に関する法律(昭和44年法律第58号。以下「農振法」という。)第6条第1項の規定により指定された地域をいう。)において、それぞれの地域のアイデンティティとなるような魅力ある景観を保全・創出するために必要となる基本的な事項を示すものである。
 このため、基本的な事項としては、保全・創出すべき地域の景観の特色、そのような景観が広がっている地域の範囲、そのような景観を保全・創出するための方針等を示すことが望ましい。
 なお、景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的な事項を都道府県が定める場合にあっては、景観農業振興地域整備計画の策定主体である市町村と事前に調整することが望ましい。

景観農業振興地域整備計画等
(1)趣旨

 農山村地域は、農林産物の生産の場であり、農林業が持続的な発展により、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の作成、文化の伝承等の多面的な機能を発揮している。農山村の美しさは、人間が自然に働きかけながら永い年月をかけて創り出したものであり、その土地ごとの気候・気象や土壌、植生、水質などいわゆる「風土」に適応した形の農林業の営みや暮らし、その中から生まれ受け継がれてきた伝統文化などの要素が一体となって醸成されている。
 近年、豊かな自然、やすらぎ、美しい景観等の農山村地域固有の魅力が国民に認識され、グリーン・ツーリズムやUIJターンなどの動きが見られ、また、農山村に暮らす人々も自らの地域の価値を再認識し、地域固有の資源を活用した農山村の活性化の動きも生じている。しかし一方で、過疎化、高齢化に加え混住化等による地域社会の連帯性の弱まりにより、農地、森林等の地域環境の管理に支障が生じており、農山村の魅力が損なわれてきている。
 このような状況を踏まえ、今後の農山村の振興は、地域住民と都市住民等との連携を深めた都市と農山村の交流による開かれた農山村の構築が重要であり、農山村の個性・多様性を重視し、農山村の良さの再発見を通じて、農山村らしさの回復を目指すとともに、国民共有の財産として国民的視点から積極的な農山村の振興を図っていくことが求められている。そのために、良好な農山村景観の保全・創出は重要な要素であり、景観農業振興地域整備計画を作成する趣旨でもある。
 景観農業振興地域整備計画は、景観計画及び農業振興地域整備計画(農振法第8条第1項により定められた農業振興地域整備計画という。以下同じ。)に適合させつつ、景観と調和のとれた良好な営農条件を確保するために、対象とする区域、その区域内における土地の農業上の利用に関する事項、農業生産の基盤の整備及び開発に関する事項、農用地等の保全に関する事項、農業の近代化のための施設の整備に関する事項について一体的に定めるものである。

(2)景観農業振興地域整備計画に定める事項
(1)景観農業振興地域の区域

1)景観農業振興地域整備計画では、景観と調和した営農条件の確保のあり方を定めるとともに、集落周辺の農地については、景観計画で確保される集落景観と一体的な景観を形成する土地の農業上の利用に配慮したあり方を定めるものであり、農林業が営まれることにより形成される景観の他、集落、水辺、森林、里山等、様々な要素が相まって、良好な景観が創出されることにかんがみ、多様な視点で、地域の美しさを捉え、区域を定めることが望ましい。このため、景観農業振興地域整備計画の対象は、農振法第8条第2項第1号の農用地区域に限定せず、農用地区域以外の区域の農用地及び農業用施設についても景観農業振興地域整備計画の対象に含め、一体的な保全及び整備により景観形成を図ることが望ましい。
2)景観農業振興地域整備計画の区域において、景観上の特性の異なる地区を複数含む場合においては、区域を区分して区域名を定める等によりそれぞれの区分ごとに農業上の利用等必要な事項について定めることも差し支えない。また、景観農業振興地域整備計画が複数の分離した区域を持つこと、一つの市町村が複数の土地の区域について、それぞれ別の景観農業振興地域整備計画を定めることも差し支えない。なお、同一地域が複数の景観農業振興地域整備計画の対象となることは、計画内容の明示性に欠ける等混乱をきたすおそれがあるため避けるべきであって、この場合、内容に応じて区域を区分することが望ましい。
3)景観農業振興地域整備計画の区域には、(1)国有林野及び公有林野等官行造林地区、(2)森林法による保安林、保安施設地区、保安林・保安施設地区予定地(用排水路等の農業用施設等の設置に係る区域で、当該保安林の解除について事前調整を了している区域を除く。)を含めべきではない。また、同法第5条第1項に規定する地域森林計画の対象となっている民有林が含まれる場合には、法第59条の規定により、景観計画に即してその公益的機能の維持増進を図ることが適当と認める場合には、市町村森林整備計画の一部を変更することができる。これらのことから、景観農業振興地域整備計画の策定・変更、協議の回答に当たっては、市町村及び都道府県の農政部局は林務担当部局と十分調整することが望ましい。
4)景観農業振興地域整備計画の区域の表示は、景観農業振興地域整備計画に関する省令(平成16年農林水産省令第97号)第2条に定めるところにより、特定の土地が区域に含まれているか否かが明らかとなるように区域を明らかにして行うものとし、例えば、景観農業振興地域整備計画の区域を明示的に表示でき縮尺の図面を使用することが望ましい。
  特に、景観農業振興地域整備計画の区域や内容を異にする景観農業振興地域整備計画の区域内の地区の境界付近においては、土地に関し権利を有するものが、自己の権利に係る土地が景観農業振興地域整備計画に含まれるかどうか等を容易に判断することができるように、区域を明示的に表示する観点から、縮尺2500分の1程度の計画図とすべきである。なお、縮尺2500分の1程度の図面が存在しない場合においてはこの限りではないが、その場合においても、できる限り縮尺の大きい計画図とすべきである。

(2)景観と調和のとれた土地の農業上の利用に関する事項
1)本事項は、景観と調和のとれた良好な営農条件を確保するために、土地利用の勧告制度の運用、協定制度の活用等を含めた効率的、総合的な方策について定める趣旨であり、地域内の農用地の利用動向、農地転用動向、農用地及び農業用施設等の整備状況等を勘案して、当該地域において総合的に農業振興を図るために必要な事項を一体的に定めることが望ましい。
2)本事項は景観農業振興地域整備計画の基本をなすものであるから、土地の位置、地形その他の自然的条件、地域の農業生産の動向、農用地及び農業用施設等の整備の見通し、地域住民等の意向と合意形成を踏まえて作成することが望ましい。
  例えば、棚田景観の保全であれば、景観と調和した石積み畦畔の管理、用水路の整備及び管理、農道の整備及び管理、農業生産のあり方、農業生産の主体等、棚田景観を保全するための事項について、散居集落と周辺農地の景観であれば、周辺農地の農業生産のあり方、耕作放棄地が発生しないような生産管理、さらには景観計画において規制誘導されている集落部分の景観保全・形成との関連等について、また、耕作放棄地防止のための集落営農によるブロックローテーションの実施や作業受委託の方法等について記述することが考えられる。

(3)農振法第8条第2項第2号、第2号の2及び第4号に掲げる事項
1)農業生産の基盤の整備及び開発に関する事項(農振法第8条第2項第2号)
  本事項は、農山村地域の景観を構成する主要な要素の一つである農業生産の基盤の整備及び開発について、例えば、農業用水路を景観に配慮した石積み水路にする等の景観上必要な整備に関する事項及び基準を定めることとしたものである。
  なお、本事項については、地形条件及び構造上の条件等に配慮して定める必要があることから景観農業振興地域整備計画に積極的に位置付け、諸条件に配慮しつつ、即地的に整備及び開発に関する事項を定め、景観と調和のとれた良好な営農条件を確保することが望ましい。
  また、土地改良施設については、その施設自体の形態や機能の発揮が農村地域における良好な景観の形成に資することになっていることから、景観重要公共施設に位置付けるとともに、景観と調和のとれた良好な営農条件を確保するため、景観農業振興地域整備計画の計画事項に位置付け、農村地域の土地利用と調和のとれた土地改良施設の整備を行うことが望ましい。
2)農用地等の保全に関する事項(農振法第8条第2項第2号の2)
  農山村地域の景観は、農林業が持続的に営まれることにより形成されるものであり、耕作放棄地や管理不十分な農地等の解消は、良好な景観を維持・保全する上で重要な課題である。本事項は、耕作放棄地等の解消するために行う基盤整備やその他の活動等の対策について定めることとしている。
3)農業の近代化のための施設の整備に関する事項(農振法第8条第2項第4号)
  本事項は、農山村地域の景観を構成する主要な要素の一つである農業の近代化のための施設について、景観と調和のとれた施設の配置、形態、色彩その他の意匠等に関する基準を定めることとしたものである。

(3)景観農業振興地域整備計画の決定手続
1)市町村は、景観農業振興地域整備計画が景観計画を受けて定められるものであることを踏まえ、景観農業振興地域整備計画を定める場合にあっては、景観計画の作成の段階からおおむね調整を行っておくことが望ましい。
2)市町村は、景観農業振興地域整備計画を策定又は変更するに当たっては、景観農業振興地域整備計画の推進に資する農業生産基盤整備等の諸施策の実施に関連する団体である農業協同組合、土地改良区及び森林組合に意見を聴くことが望ましい。
3)都道府県知事の景観農業振興地域整備計画の協議の回答は、当該計画が法第55条第3項に規定する要件に適合していること等についての審査のほか、田園環境整備マスタープラン等農業振興に関する基本的な計画との整合性についても十分留意して行うことが望ましい。
  また、景観農業振興地域整備計画の策定又は変更に関連し、市町村農業振興地域整備計画の変更を行う場合には、都道府県知事は、当該変更の協議に対する回答と景観農業振興地域整備計画の協議に対する回答の時期を整合させることが望ましい。
4)法第55条第4項において準用する農振法第12条第1項の規定に基づく農林水産大臣への景観農業振興地域整備計画書の写しの送付先は、地方農政局(北海道にあっては農林水産省農村振興局、沖縄県にあっては沖縄総合事務局)とすることが望ましい。
5)法第55条第4項において準用する農振法第12条第1項の規定に基づき、景観農業振興地域整備計画書又はその写しを縦覧に供するときは、農業振興地域の整備に関する法律施行規則(昭和44年農林省令第45号)第5条の規定によるほか、あらかじめ縦覧の場所等について関係者に周知させることが望ましい。

(4)土地利用についての勧告
 法第56条は、施策の実効性を担保するため、景観農業振興地域整備計画の区域内にある土地が当該計画に従って利用されていない場合には、市町村長は、その土地の所有者等に対し、その土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用すべき旨を勧告するとともに、勧告を受けた者がこれに従わないとき等は、適切な利用が見込まれる者への権利移転に関し協議すべき旨の勧告を行うことができるとしたものである。

(5)農地法の特例
 農地法(昭和27年法律第229号)は、法人については、主たる事業が農業である等の要件を満たす農業生産法人に限って農地の権利取得を認めることとしており、景観整備機構に指定された公益法人やNPOは農地の権利を原則として取得できない。しかしながら、景観整備機構が景観形成に資する作物の育成等の業務を行うことも考えられることから、法第56条第2項の勧告に従い、その勧告に係る農地又は採草牧草地について景観整備機構のために使用貸借による権利又は賃借権を設定しようとするときは、農地法の規定にかかわらず使用貸借による権利又は賃借権の設定ができるとしたものである。

(6)農振法の特例
 法第58条の農振法の特例は、農振法の規定による開発行為の許可をする場合において、当該開発行為により当該開発行為に係る土地を景観農業振興地域整備計画に従って利用することが困難となると認める場合は、許可できないこととする基準を追加することにより、景観と調和のとれた良好な営農条件の確保を図るものである。
 これにより、農振法において、農業振興地域整備計画の達成に支障を生じるおそれがある場合のほか、景観農業振興地域整備計画に従った農地等の利用を困難とするような行為についても制限することで、景観と調和のとれた良好な営農条件の確保が図られるようにしたものである。

(7)景観計画区域における市町村森林整備計画の留意点
(1)景観計画区域における市町村森林整備計画の変更
 法第59条において、地域森林計画の対象とする森林につき、景観計画に即してその公益的機能の維持増進を図ることが適当と認める場合には、市町村森林整備計画の一部を変更することができるとされている。
 景観計画区域のなかに森林が含まれており、伐採・造林・保育方法等市町村森林整備計画で定める森林の取扱方法で特に景観に留意する事項がある場合は、区域を明らかにし、市町村森林整備計画に定める事項のうち関連する事項に留意すべき内容を盛り込むことができる。
 また、市町村森林整備計画の変更に当たっては、当該景観が林業生産活動等の結果維持されてきたことを踏まえ、今後とも適切に林業生産活動等が営まれるよう留意することとし、農業をはじめとする関係部局と十分調整することが望ましい。

(2)景観協定を締結する際の市町村森林整備計画との関係
 景観協定に市町村森林整備計画の対象となる森林を含める場合には、市町村森林整備計画で定める森林の取扱方法と整合性の図れたものとなるよう留意する必要がある。

(3)木竹の伐採等に係る景観形成基準と市町村森林整備計画との関係
 景観計画区域に市町村森林整備計画の対象となる森林が含まれる場合には、木竹の伐採等に係る景観形成基準の策定等に際して、林業生産活動との調和に十分留意すべきである。特に、市町村森林整備計画に規定する木竹の伐採に関する事項と景観計画に基づく木竹の伐採に係る景観形成基準との整合性を図るよう、景観担当部局と林務担当部局で十分な調整を行うべきである。

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田川沿岸地区の竣工式
このほど、県営圃場整備事業田川沿岸地区が竣工の運びとなり、1月12日、今市市猪倉地内で記念碑除幕式と祝賀会が挙行された。
 式典には、栃木県知事代理の君島好美栃木県上都賀農業振興事務所長、斎藤文夫今市市長、渡辺渡栃木県議会議員他多数の来賓と田井哲田川流域土地改良区理事長、神山博田川沿岸地区圃場整備事業推進委員長はじめ多くの役員が出席し、盛大に挙行された。

◆事業の概要◆
 事 業 名 県営圃場整備事業
 地区面積 99ha
 総事業費 12億円
 工  期 平成8年度〜平成15年度



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お知らせ
本会の第74回通常総会は、3月25日(金)午前10時から栃木県土地改良会館において開催いたします。

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お詫びと訂正
 本紙第465号(平成17年1月1日発行)15ページに掲載いたしました「土地改良換地士資格試験の合格者」に関する記事に誤りがありましたので、お詫び申し上げますと共に、下記のとおり訂正申し上げます。

・福 島 千 夏 氏(栃木県農務部農地計画課

・福 島 千 夏 氏(栃木県農務部農地整備課

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平成17年1月主要行事報告
行  事
4仕事始め式
12農業土木学会第37回中央研修会
15バイオマス利活用シンポジウム
18〜19農業農村整備事業品質確保・向上対策事業地方研修会
20米政策改革担当者会議
20とちぎ夢大地フォーラム
21平成16年度土地改良区役職員研修会
24県営圃場整備事業田川沿岸地区竣工式
24水土保全対策事業説明会
27県営圃場整備事業富屋西部地区起工式

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表紙写真説明

表紙の作品『山里の竹煙』

○撮影者
 印 南 正 行 氏
 (今市市明神在住)

○撮影地 塩谷郡塩谷町

○コ メ ン ト
 平成16年度「美しいとちぎのむら写真コンテスト」農村のくらしと文化部門で入選に輝いた作品です。
 竹を焼いて、竹炭と竹酢液を作っている様子だと思います。逆光で撮影したことにより、煙の中にもかかわらず、炭窯を覆っている屋根が強調され、人物が浮かび上がって見えるという面白い作品になっています。
 

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