政府は、昨年12月24日の閣議で平成19年度一般会計予算の政府案を決定し、今通常国会に提出した。
農林水産予算概算決定の総額は、2兆6927億円(対前年比96.9%)、農業農村整備事業費は、6747億円(対前年比92.7%)で、うち重点5分野に5849億円となっている。
重点施策として、(1)構造改革のための基盤づくりの新たな展開、(2)地域の活力を活かした農山漁村づくり、(3)地域資源を活かした潤いある国民生活の実現を提示した。新規事業として、(1)では、基幹水利施設ストックマネジメント事業、農業生産法人等育成緊急整備事業、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金等を新たに創設、担い手の育成・確保や農地の利用促進を図り農業の構造改革の加速化を支援する。(2)では、農地・水・環境保全向上対策が本格実施されるとともに、農山漁村の居住者・滞在者が増加することによって地域の活性化を推進するための支援を実施する。また、農村地域における防災・減災対策として、ハード・ソフトが一体となったシステムの構築を推進し、安全で安心なくらしの実現を支援する。(3)では、地域の個性を活かした美しい農村づくりを推進するため、都市と農村の多様な主体が共生・対流する先導的取組に対する支援や、バイオマス資源や農業用水の自然エネルギーを利活用するシステムづくりの支援を実施する。
また、公共事業については、景気対策としてでなく、必要な社会資本整備へと転換する必要があるとされ、公共投資の重点化・効率化を徹底するため、国と地方の役割分担の明確化等の観点から、採択要件の引き上げにより事業の重点化の推進や「農業農村整備事業等コスト構造改革プログラム」に沿ったコスト縮減等にも積極的に取り組むとしている。
なお、概算決定のポイントについては、次のとおり。
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平成19年度 農業農村整備事業予算 概算決定のポイントト
1.平成19年度農業農村整備事業概算決定額
6,747億円(対前年度比92.7%)…【1】
うち「重点5分野」;5,849億円
その他 農地・水・環境保全向上対策のうち
共同活動支援交付金(非公共);256億円…【2】
(参考)【1】+【2】;7,002億円(対前年度比96.2%)
※上記のほか、地域再生基盤強化交付金措置額を内閣府に計上。
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2.農業農村整備事業における重点分野等への対応
(1)経済成長戦略推進要望への対応 136億円
経済成長戦略大綱(平成18年7月6日財政・経済一体改革会議)に基づき、農林水産業の国際競争力強化に資する以下の事業について要求。
〔1〕経営体育成基盤整備事業 【51億円】
基盤整備を契機として担い手への農地の利用集積を促進することにより、効率的かつ安定的な農業経営の実現を図り、農業の国際競争力強化に資する。(担い手への農地利用集積が高度なものに限定)
〔2〕畑地帯総合農地整備事業 【74億円】
基盤整備を契機として畑地帯における担い手の確保と農地の利用集積を促進することにより、効率的かつ安定的な農業経営の実現を図り、農業の国際競争力強化に資する。(担い手への農地利用集積が高度なものに限定)
〔3〕農業生産法人等育成緊急整備事業(新規)
【10億円】
土地利用型農業地域において、優れた経営者としての能力を身に付け、意欲をもって農業経営の発展を目指す農業生産法人等を、基盤整備を契機として緊急的に育成し、望ましい農業構造を確立する。
(2)新重点5分野への対応
5,849億円(重点化率86.7%)
経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006(平成18年7月7日閣議決定)に基づき、安全・安心の確保と柔軟で多様な社会の実現のための取組を推進。
生活におけるリスクへの対処 【5,849億円】
○災害対策(1,078億円)
大規模水害・土砂災害対策、津波・高潮対策や防災情報の伝達体制の整備等を通じた安全で安心な国土づくり
○安全性・信頼の再構築(4,130億円)
国民への食料の安定供給を確保するための農地・農業用水等の食料供給力の維持・向上
○地球環境の保全・循環型社会の構築(641億円)
自然エネルギー及び有機性資源等のリサイクルによる循環型社会の構築
3.事業の進め方の改革に向けた取組みの推進
1.農政改革の推進(ハードからソフトへの政策手段の転換)
経営所得安定対策の導入に合わせ、これと車の両輪をなす農地・水・環境保全向上対策へ公共予算をシフトし、農政改革を強力に推進する。
・農地・水・環境保全向上対策【新規】
(非公共)
うち共同活動支援交付金 256億円(皆増)
2.事業の重点化
国と地方の役割分担の明確化等の観点から、採択要件(総事業費)の引き上げにより事業の重点化を推進。
・集落基盤整備事業
(団体営事業:0.5億円以上→2.0億円以上、
都道府県営事業:1.0億円以上→2.0億円以上)
・集落地域整備統合補助事業(0.5億円以上→2.0億円以上)
3.コスト縮減等の推進
(1)コスト縮減の推進
「農業農村整備事業等コスト構造改革プログラム」に沿い、(1)効率性の向上、(2)設計等の最適化、(3)調達の最適化、(4)地域特性の重視、(5)透明性の向上の視点から、平成 19年度までに15%(平成14年度比)のコスト縮減を目指す総合的なコスト構造改革を推進。
(2)入札制度改革
一般競争入札及び総合評価落札方式の拡大など入札制度改革を推進する。
一般競争入札の対象を5年間で概ね8割まで拡大する。
4.重点施策の内容
1.構造改革のための基盤づくりの新たな展開
【ポイント】
農業の構造改革の加速化を図る観点から、農業生産法人等の育成を緊急的に支援するなど、基盤整備を契機とした担い手の育成・確保や農地の利用促進を図る。
農業生産の基礎となる基幹的な農業水利ストックを効率的に更新・保全管理するための仕組みを整備する。
重点1 水利ストックの有効活用
〇基幹水利施設ストックマネジメント事業【公共】(新規) 4,000(0)百万円
〇国営造成水利施設保全対策指導事業【公共】(拡充) 1,786(873)百万円
既存の農業水利施設を有効活用しライフサイクルコストを低減するため、国や都道府県が造成した基幹的な農業水利施設を対象に、機能診断から予防保全対策、更新整備までを一貫して実施できる仕組みを整備。
特に、国営事業により造成された農業水利施設については、すべての施設の機能診断を今後5年間で実施。
重点2 農業の構造改革の加速化に資する
基盤整備
〇農業生産法人等育成緊急整備事業【公共】(新規)
1,000(0)百万円
望ましい農業構造の確立及び農村社会の持続的な発展に資するため、基盤整備を契機として経営者としての能力を身に付けた農業生産法人等を緊急的に育成。
〇段階的基盤整備等実証調査事業【公共】(新規)
30(0)百万円
農地の利用集積の状況など地域の構造改革の進展に応じて担い手が必要とする基盤整備の内容を選択する方式(段階的基盤整備)を、モデル地区での計画策定や経営体育成基盤整備事業等の実施を通じて実証し、将来全国展開を図るための指針を策定。
〇土地改良負担金総合償還対策事業【非公共】(拡充)
土地改良事業の負担金軽減対策を充実するとともに、それを通じて品目横断的経営安定対策加入者などの担い手への農地利用集積を図ること等によって、農業構造改革の促進を支援。
重点3 安全な食生活を支える基盤整備
〇食の安全・安心確保基盤整備推進対策【公共】(新規) 70(0)百万円
かんがい用水を活用した土壌消毒など食の安全・安心に資する基盤整備にかかる新技術導入を支援。
〇農業用水関連特定森林整備対策【公共】(新規)
5,000(0)百万円
〇農業用水水源地域保全対策事業【公共】(新規)
1,000(0)百万円
良質な農業用水の安定的な供給と国土の保全のため、水源地域の水源かん養機能等の向上に向け、森林の整備と地域住民への普及促進活動等を一体的に実施。
重点4 耕作放棄地対策の一層の推進
〇耕作放棄地防止適正管理実証化事業委託【非公共】(新規) 44(0)百万円
耕作放棄地の発生抑制等と農地の保全及び有効利用を図るため、地域農業者が容易に農地を管理できる方策を検討し、費用対効果の試算やマニュアルを作成。
〇農山漁村活性化プロジェクト支援交付金【非公共】(新規) 34,088(0)百万円の内数
遊休農地の解消・再活用に向けた調査・調整活動、実践活動について、地域の実情、創意工夫に基づいた総合的な支援及び遊休農地を活用して農業生産活動等を行う場合に必要な土地条件整備を支援。
2.地域の活力を活かした農山漁村づくり
【ポイント】
農地・水・環境の良好な保全と質的向上を図るため、地域ぐるみでの効果の高い共同活動と先進的な営農活動を実施する地域等を支援する交付金を創設する。
農山漁村の居住者・滞在者を増やすこと等により地域の活性化を総合的かつ機動的に支援する交付金を創設する。また、自ら考え行動する意欲あふれた農山漁村を実現するため、情報基盤や生活環境基盤の整備を推進する。
ハード・ソフトが一体となった防災・減災対策を推進し、自助、共助、公助による安全で安心なくらしを実現する。
重点5 農地・水・環境保全向上対策の本格実施
〇共同活動支援交付金【非公共】(新規)
25,588(0)百万円
社会共通資本である農地・農業用水等の資源を適切に保全し、質的向上を図るため、地域ぐるみで効果の高い活動を実施する地域を支援。
〇営農活動支援交付金【非公共】(新規)
2,986(0)百万円
化学肥料や化学合成農薬の使用を大幅に低減するなど、地域でまとまって環境負荷を低減する先進的な営農活動等を支援。
〇農地・水・環境保全向上活動推進交付金【非公共】(新規) 1,712(0)百万円
本対策の定着に向けて、地域協議会及び地方公共団体が実施する推進事務等の適正かつ円滑な実施を確立する。
重点6 農山漁村地域の活性化の推進
〇農山漁村活性化プロジェクト支援交付金【非公共】(新規)(再掲) 34,088(0)百万円の内数
農山漁村地域において、居住者及び滞在者の増加といった観点も踏まえ、農・林・水の縦割りなく施設の整備等の各種取組を総合的かつ機動的に支援。
〇「立ち上がる農山漁村」推進事業委託【非公共】(継続) 34(40)百万円
地域の活性化と地域雇用の創造に向けて自律的に取組んでいる先駆的な事例を全国へ発信・奨励していくため、(1)普及・広報活動、(2)自律的な活性化方策に関するマニュアルの作成、(3)知的財産権を活用した地域活性化に向けた研修会、アドバイザー派遣等を実施。
〇農村地域IT化推進支援事業【非公共】(新規)
20(0)百万円
〇農山漁村活性化プロジェクト支援交付金【非公共】(新規)(再掲) 34,088(0)百万円の内数
農村地域における情報基盤の整備や、IT化に向けた構想づくり等を支援。
重点7 農村地域における防災・減災の取組
〇国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク構築事業【公共】(新規) 95(0)百万円
防災上重要な土地改良施設について、水位等の観測データと併せて降雨量等の防災情報を収集、整理し、リアルタイムで行政機関、施設管理者等が共有できるシステムを構築し、地域の防災・減災活動を支援。
〇農村防災・災害対応指導体制強化事業【公共】(新規) 25(0)百万円
農村における防災・災害対応について、技術者のボランティアによる指導を全国レベルで推進する体制の強化に向け、モデル県において指導活動を実践する実証調査の実施、指導体制の強化についての検討及び指導活動の全国的な普及・定着を推進。
〇湛水防除事業等【公共】(継続)
46,896(50,032)百万円
湛水被害防止のための排水施設の整備や災害発生のおそれのあるため池の改修など、農地・農業用施設に係る防災対策を推進。
重点8 中山間地域等直接支払制度の確実な実施
〇中山間地域等直接支払交付金【非公共】(継続)
22,146(22,146)百万円
耕作放棄地の増加等による多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において、農業生産活動等が継続されるよう、農業生産条件の不利を補正するための支援として、中山間地域等直接支払制度を継続的に実施。
3.地域資源を活かした潤いある国民生活の実現
【ポイント】
都市と農村の多様な主体が参加し行う、共生・対流に資する広域連携プロジェクト等を公募方式で選定して支援する。
また、バイオ燃料の導入やバイオマスタウン構築の加速化を支援すると共に、農業水利施設を小水力発電として一般利用することを支援する。
重点9 都市・農村の共生・対流の新たな展開
〇広域連携共生・対流等推進交付金【非公共】(新規) 300(0)百万円
都会の若者の長期農業等ボランティア活動など共生・対流を活性化するための広域連携プロジェクト等を公募方式で選定して支援。
〇広域連携共生・対流等整備交付金【非公共】(新規) 500(0)百万円
都道府県を越えた広域的な連携の先導的取組を実現するために必要な施設等の整備を支援。
重点10 都市農業の新たな展開
〇広域連携共生・対流等推進交付金【非公共】(新規)(再掲) 300(0)百万円
農家組織、NPO、都市住民、自治体等多様な主体が参加して、体験農園の全国的な普及など、身近な農業を活かした都市住民の生活向上に資する先導的取組を公募方式で選定して支援。
〇広域連携共生・対流等整備交付金【非公共】(新規)(再掲) 500(0)百万円
民間団体や自治体等が連携して行う、都市農業の振興に必要な施設等の整備を支援。
重点11 バイオマスの利活用の推進
〇バイオ燃料地域利用モデル実証事業【非公共】(新規) 8,544(0)百万円
食料生産過程の副産物、規格外農産物等を活用して、バイオ燃料の地域利用モデル実証事業を推進するための施設整備と技術実証を支援。
〇地域バイオマス利活用交付金【非公共】(新規)
14,346(0)百万円の内数
バイオマスタウンの実現に向け、農村地域に豊富に賦存するバイオマス資源を、製品やエネルギーに変換して利用する総合的な利活用システムの構築に向けた取組を支援。
重点12 農業用水の自然エネルギーの活用支援
〇農業用水の自然エネルギーの活用支援事業【非公共】(新規) 30(0)百万円
小水力発電の見込める農業水利施設を示した「小水力適地情報」の作成など農業用水の自然エネルギーの利用に向けたアプローチを支援
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事 項
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18年度 予算額
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19年度 概算決定額
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対前年 伸 率
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農業農村整備事業
(うち農村振興局)
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727,829
710,116
|
674,656
657,590
|
92.7
92.6
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(農業生産基盤整備)
1.かんがい排水
うち国営かんがい排水
うち基幹水利施設ストックマネジメント事業
2.経営体育成基盤整備
うち農業生産法人等育成緊急整備事業
3.諸土地改良
うち農業用水水源地域保全整備事業
4.畑地帯総合農地整備
5.国営農用地再編整備
6.機構事業
7.その他
|
444,537
229,223
197,483
−
80,010
−
9,812
−
50,189
19,423
27,457
28,423
|
428,879
229,279
193,604
4,000
74,600
1,000
14,275
5,000
48,451
12,011
27,054
23,210
|
96.5
100.0
98.0
皆増
93.2
皆増
145.5
皆増
96.5
61.8
98.5
81.7
|
(農村整備)
8.農道整備
9.農業集落排水
10.農村総合整備
11.農村振興整備
うち村づくり交付金
12.中山間総合整備
13.その他
|
155,872
36,127
20,940
9,427
37,695
25,000
40,555
11,128
|
131,484
30,529
18,846
5,445
36,691
25,000
33,487
6,485
|
84.4
84.5
90.0
57.8
97.3
100.0
82.6
58.3
|
(農地等保全管理)
14.防災保全
(1)直轄地すべり
(2)国営総合農地防災
(3)農地防災
うち湛水防除事業
(4)農地保全等
うち地すべり対策事業
15.土地改良施設管理
16.その他
|
127,421
109,413
1,800
44,290
43,159
16,157
20,163
5,781
13,451
4,557
|
114,293
98,313
1,800
36,911
39,588
16,467
20,014
5,981
12,854
3,126
|
89.7
89.9
100.0
83.3
91.7
101.9
99.3
103.5
95.6
68.6
|
注1:百万円単位に四捨五入のため、計が合わない場合がある。